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ショーの内容は、オレが最後に見た時から変わっていなかった。それなら、遊びたいおともだちは、ラックとシマーの間に入ってダンスをさせられるはずだ。
そして、おともだちの印に、耳のついたカチューシャと、キラキラ光る電飾のおもちゃを貰う。縁日の夜店で売っているような物だ。
実はオレも、おともだちだった時がある。その印は今でも部屋の押し入れに押し込んであるが、単に、捨てられないだけ。別に付けてはしゃいだりしない。もう何年と、触ってもいない。
今のオレは、時給という概念を知っている。衆人環視の中でラジオ体操レベルのふりつけをやる度胸と恥の代償にしては、安すぎる。
スチャラカチャッチャ、パッパラパ、スチャラカチャッチャ、ドンドンドン。
ズドドン、ズドドン、チャッチャッチャッチャッ。
誰も手を挙げないうちに、流れる音楽が切り替わろうとしていた。気の抜けたBGMから、さらにアップテンポで、ダンスと手拍子をしてくださいと言わんばかりのメロディーに。
大昔なら、進んで手を挙げる子供もいたかも知れない。けれど今は、どう考えても、内容と人員募集が間に合っていない。
もう、見ている方がいたたまれない。
誰か何とかしてやればいいのに。それか、最後くらいこんなお遊戯、やめてしまえばいいのに。
そう思っていたら、前の方で人が動くのが見えた。
ズドドン、ズドドン、チャッチャッチャッチャッ。
まさか、と思ったが、オレの予想は当たってしまった。
「はーい!」
リッキーが高々と手を上げて、近くにいた子供と一緒に進み出た。手をつないでいるのは、白いモコモコの上着を着た男の子だ。
どう考えても、高校生が飛び入り参加していいようなクオリティーじゃない。運動会のソーラン節の方がまだ100倍マシだ。あれは、学校に、やらされているんだから。
そんな事も、リッキーは気にしていないらしい。
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