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BGMが完全に切り替わると、ラック、リッキー、シマーの順で並んで、ノリノリで踊り始めた。
茶色のフリースを着たリッキーと、白いモコモコの男の子は、見よう見まねどころか、まったく違う動きだ。
いや、スピーカーのセリフでは、どう動くかの説明はしているみたいだが、BGMとの音量バランスが悪すぎる。ただの、ボボボォー、ドッドドォー、という音でしかなくなっている。
そんな最悪のシチュエーションで、こんな大勢の知らない人間の見ている前で、あんなに全力で、子供向けのお遊戯を踊れる17歳がいるだろうか。
オレなら、誰かに見られていなくても絶対やりたくない。知り合いでも居ようものなら、なんて考えるだけでも首の後ろから背中まで寒くなる。
オレの親友は、勇者だった。
紙カップを握りしめて見守っていたら、前の方で、小さい影がちょこんと動いた。
さっきリッキーと手遊びをしていた、青いジャンパーの男の子だ。立ち上がって、リッキーに吸い寄せられるように、前に歩いていく。
確かに、表情の変わらない、何の生き物かも怪しいきぐるみよりは、人間のお兄さんの方が親しみやすいのかも知れない。特にリッキーみたいに、笑顔で楽しそうに踊っていれば。
リッキーも気付いて、嬉しそうに横に来させた。
おともだちが、一緒に前に出たモコモコの男の子と、リッキーと、青いジャンパーの男の子の3人になった。
ここで、また奇跡が起こった。
固まって見ていた子供が1人、2人と立ち上がって、ダンスに加わっていく。
男の子、女の子、ピョンピョン跳ねる子もいれば、まだ歩き始めたばっかりみたいにヨタヨタしている子もいる。
流れる音楽も、周りの動きも無視して、自由に動いていた。
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