3.ヒーローと交流タイム

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チュッという音がはっきり聞こえた。 「あ」 オレの方が先に声を出していた。 「へっ!」 リッキーが真っ赤になるのが見える。 すぐに離れると、女の人はウィンクをして、ダンサーの列に戻って行った。パレードは撤収らしい。 オレたちは2人とも、その場にぼう然と立っていた。 何が起こったのか、しっかり見ていたけれど、理解が追いつかなかった。 「い、行こう……」 とりあえず言葉をしぼり出したが、リッキーはまだ、ぼーっとして頬を押さえている。殴られた人みたいに。 オレが歩き出したのを見て、ようやく、ココアを持ったままトボトボついて来た。 「いい匂いしたぁ……」 リッキーが独り言みたいに言ったのが聞こえた時、なぜかオレは、イラッとした。 もうあの時みたいな、子供じゃない。高校生になった。志望校は全部A判定だった。 なのに、まだ理解できない事が起こった。 何かムカつく。 けど、何にムカついているのか、自分でも分からない。誰かに伝える事もできそうにない。 リッキーが悪いのではないし、別に、うらやましいのでもない。 あれだけ盛り上げたのだから、ごほうびくらい貰ってもいい。いや、貰うべきだ。 オレは面白がって、ハグさせた。その時までは、リッキーに、女の人との思い出ができて良かったくらいに思っていたのに。 女の人の、水色の目が忘れられない。 あのウィンクは、リッキーにしたんじゃない。オレにしたんだ。 どうしてもそんな風に見えてしまって、なぜか、見下されている気がした。 それに対して、オレは、どうしようもなく腹が立っているみたいだった。
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