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リッキーは、うーん、とうなって下を向く。
「何にも見てなかったよ。おれやばいね」
「だからリッキーはいいんだって。普通──って言うか、みんなはオレと居るの嫌がるでしょ? いろいろ見えすぎ。オレ、可愛げないんだよ」
それに、見えていても、何もできなかった。だからオレは、自分が嫌いだ。
「……ずっと一緒にいるから分かんないなぁ。マサは可愛いよ」
オレの幼馴染は、誰にでも優しいから、そう言ってくれるけれど。
「あと、あの人、少なくとも1回は店来た事あるよ。別の女の人と子供と」
だから、さっき、あれっと言いそうになってしまった。
22時までのシフトの日で、退勤する間際に見えた。派手な化粧をした露出度の高い女の人と、そんな時間に外出するのは不自然な、小さな子供。男の人とは、顔が似ていなかった。
別に、ファミレスの店員だからって全部のお客様を記憶しようとしているワケではない。たまたま憶えているだけ。
「えぇーっ!」
リッキーが大声を上げた時、背後でガサガサッと音がした。
すぐに振り向いたが、リスは見つけられなかった。いるには、いるのかも知れない。
前に向き直るタイミングで、リッキーと一瞬、目が合った。
さっきから、やたらと目が合う。オレが機嫌を悪くして顔を見ていなかったから、そう感じるだけかも知れないが。
「接客業1年もやればこうなるでしょ」
別に、接客業がやりたかったワケでもない。
高校生になったらバイトしようと決めていて、学校から近くて、マニュアルがあって、ちょうどリッキーもいたから、そこにしただけ。
幼馴染が学校でもバイト先でも先輩なのは、ちょっと変な感じだが、10ヶ月もして慣れない方がおかしい。
「おれマサより先輩なんだけどなぁ」
先輩は、不思議そうに首を傾げている。
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