1.ジェットコースター待機列

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そこは何もかも最先端で、園内にはレストランがいくつもあって、建物は海外の街並みを再現していたり、屋内のアトラクションもあったり、売店ではSNS映えするカラフルな食べ物が売っていたりした。マスコットキャラの着ぐるみも、新品らしく綺麗だった。 オレはお父さんがミーハーだから、行きたいと言われて、仕方なくついて行っただけ。この歳で親と一緒に遊園地なんて恥ずかしかったし、絶対知り合いに会うと思ってビクビクして、全然楽しくなかった。 けれど、そこでオレは気付いてしまった。 オレの思い入れのある場所は、ただの田舎の、経営難の、老朽化した、子供向けの遊園地だと。 オレは、一応、東京生まれだ。いとこも東京にいて、おばあちゃん家も東京にある。 幼稚園から小学校に上がるタイミングで、お父さんの仕事でこの田舎に引っ越して来た。 その春休みの間に初めて出来た友達が、今も隣にいるリッキーだ。出会ったのもこのしまらくこども遊園で、偶然、住んでいるマンションが同じだった。 オレのたった1人の親友は、1つ年上で、愛すべきバカというやつだ。 さっきも『(なが)らく』を「えいらく」なんて昔の貨幣みたいな読み方をしていた。もし、えいらくだとすれば、その後に続く文章をおかしいと気付かない所がヤバい。 漢字にも弱いし、かと言って理数ができるワケでもない。勉強もできなければ、足もそれほど早い方でもない。 下の名前が(ちから)だから、音読みにして、リッキーなのだが、そんなに強そうな見た目でもない。 高校生になってからは、身長も伸び悩んでいる。現時点では、まだオレの方が小さいので、そこはイジれないが。 別に本人は、何にも悩んでなさそうに見える。 誰にでも優しいし、いつも明るいから、友達は多い。周りが助けてくれるから、愛すべきバカなのだ。
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