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リッキーもジェットコースターを見上げて、語り始めた。
「おれさぁ、大きくなったらデートでしまらくに来るの夢だったんだ」
「叶える前に閉園したね」
子供向けだから家族のお客さんが多いが、カップルも、確かにいるにはいる。
中学までは、リッキーの他にもよく遊ぶ友達がいた。オレの同級生と、リッキーの同級生で、先輩後輩の区別もほとんどない男子5人組。
でもリッキーたちが高校生になってからは、全寮制の高校に行ったり、彼女ができたり、部活が忙しくなったりで、バラバラになった。
オレとリッキーだけが、いまだに彼女もいないし、バイトも一緒のファミレスだから、ずっと付き合いが続いている。
「こういう所に来ても喜んでくれる女子っているのかな」
現実的なことしか言えないオレに対して、夢のあることしか見えないリッキーは、すぐ聞き返してくる。
「なんで、なんで?」
「女子って基本的にオレらのこと見下してるでしょ。イケメンとか先生には女アピするけど、それ以外はサル山を見る目と同じ」
こういうことを言っているから彼女ができない。自分で分かっている。でも、そうとしか思えない。
オレみたいな出っ歯で猫背のチビは、モテないのだ。たとえ成績や運動神経が良くても。
リッキーは分からないみたいで、首を傾げた。
「えっ、虫じゃないだけマシじゃない? 見ただけでギャーって言われちゃうよ」
「ポジティブすぎでしょ」
人の悪意とか、裏表とか、そういうのに人一倍鈍感なリッキーが、たまに心配になる。オレみたいに面と向かってバカと言える間柄でもないクセに、リッキーをバカ扱いしている人を、オレは知っているから。
「おサルも可愛いよ。マサルも可愛い」
「韻踏まなくていい」
オレをこんな風にからかってくるのはリッキーだけ。他の人は、オレと絡みたがらない。
リッキーは動物園エリアの方を向いて、ウッキー、と言った。仮に、サルに話しかけていたとして、この距離で聞こえるワケがないのに。
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