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ちょっと天然と言うのか、リッキーは子供だ。
けれど実際には、なかなか悪知恵が働く。
まだ本当に子供だった頃、本人から内緒で聞いた話がある。
土曜日にこのしまらくから帰る前、リッキーは、お気に入りだったぬいぐるみを、わざと忘れて行った。
夜になって、ないないと大騒ぎし、日曜日も連れてきてもらった。そこでぬいぐるみを無事に回収した後は、ダダをこねて、日曜日も遊んで帰るという、作戦だった。
それを5才、8才、12才とやっているので、リッキーの親も、さすがに忘れ物に気を付けるようになって、大きくなると通じなくなったが。
17才ともなると、もう親は同伴じゃない。
マーくんが力の面倒を見てくれるから安心だ。リッキーのお父さんから、そう言われた事がある。
おいおいと思ったが、否定はしなかった。
リッキーの家族とオレの家族は、もう親戚みたいな感じだ。最近は何だか恥ずかしくて、会っても頭を下げるくらいしかしないけれど。
順番待ちの列がノロノロ進んでいく。
ジェットコースターからはプルルルルという発車の合図、メリーゴーランドの方からは子供が好きそうな陽気なメロディー、そして全部のアトラクションから、ブゥゥーンと唸るようなモーターの音が鳴り続けている。
アナウンスも含めて、ずっと耳に入れられていると、頭がおかしくなりそうな単調さだった。
ノロノロ進むパンダのロボットが寄ってきて、追い抜かされた。
「まあ、喜んで来るのはあんな人ばっかりだろうし、別によかったんじゃない」
聞こえないように言った。乗っているのが、ヤンキーっぽいカップルだったから。
男の方は茶髪で、ダボダボの服を着て、パンダの上に立ち乗りになっている。
「オラオラ! 天然記念物捕まえたぞ!」
パンダは別に、日本の天然記念物じゃない。世界規模で見ても、絶滅危惧種でもなくなった。
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