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「キャハハハハ! ヤバーイ! チョーウケるんですけど!」
横を歩いている女の人がバカ笑いしながら撮影している。過剰な動画をネットに載せて、炎上するタイプだ。
男はイケメンでもないし、女の人も別に美人という感じではない。そのくせ、ミニスカートとブーツを穿いている。
大学生くらいだろうけど、大人として恥ずかしくないのだろうか。
リッキーは女の人の太ももを見てから、ズッと鼻をすすった。
「寒くないのかな……」
しまらくこども遊園は山の上にあるから、町の方より気温が低い。春と秋は、花粉がひどい。
人を見下すという発想のない、平和主義のリッキーを見ていると、腹を立てた自分がダサく思えてくる。
何だかんだオレは、この遊園地が好きだ。
それを、知能の低い人間にガサツに扱われるのと、ヤンキー相手だから面と向かって注意できずに陰口を言うしかない自分が、嫌いなだけだ。
ポケットの中でカイロを握って、かかとを上下に動かした。ほとんどじっとしているから、足から冷えてくる。
「普通の子はもっと、ランドとかシーとか、そういう所に行きたがると思う」
「あーそっかぁ。遠いからなぁ。チケットも高いって言うし。修学旅行で行けたの奇跡って感じ」
その前に彼女いないじゃん。と言うのは可哀想なので黙っておくが、やっぱり悩む所がズレていておかしい。
「オレは違ったしね。リッキーの世代で学校が予算使い果たしたんじゃないかって思ってたよ」
「あれ、そうだったの? じゃあ行った事ない?」
「東京に帰った時に1回あるよ。でも、いとこ家族と一緒だったから、子供6人とかいて、親も大変だったっぽくて。あんまり遊べなかった」
あの時、同い年のいとこの1人から言われたことが、いまだに忘れられない。
『ボクはいつでも来れるけど、マサルは、いなかものだもんね』
だから多めに乗れるようにと、順番を譲ってくれようとした。
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