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すごく、見下された気がした。
オレは幼稚園まで東京にいたのに。好きで田舎にいるんじゃない。家の都合で、そうなっただけ。
腹が立ったから乗らなかったし、帰るまでずっと不機嫌なまま過ごした。まだ子供だったから、どうして嫌な気分になったのか自分でも理解できなかった。
お父さんとお母さんだけに話して、東京に住みたい、帰りたいと言った。大学生になったら、1人で東京に住んでいいと言われた。
だから、オレは東京の大学に行くと決めている。
気が早いと言われても、受験が気になるのは当たり前だ。そのために勉強を続けて、先生から、特別に2年生の模試を薦められるくらいになったのだから。
ちなみにリッキーは、2年生なのに模試の日程すら分かっていなかった。どうせ忘れると思ったので、受験票も先にオレが預かっておいた。
逆に余裕すぎて、すがすがしい。
のんき者のリッキーがのんきに言う。
「今ならおれたちだけでも行けるのにねぇ」
同級生にも、バイト先にも、わざわざ夜行バスに乗って行ったと言う人は確かにいる。
オレには、そこまで行きたいという気持ちはない。大学生になって東京に住めばいくらでも行けるし、今のところ、あまり良い思い出ではない。
「交通費もかさむけどね。1回のチケットでここなら年パス買えるでしょ」
でもまあ、リッキーが誘って来たら行ってもいいとは思う。どうせ、1人では夜行バスの乗り方も分からないはずだ。
「だから毎年買っちゃうんだよねぇ」
はー、とため息を吐いてから、リッキーはくしゃくしゃのパスをひっぱり出して眺める。オレも尻ポケットの財布から出して、同じようにした。
小さな紙のチケットで、園内の写真が印刷されている。その下に、ピンク地に青と白の『しまらくこども遊園』というロゴがある。
有効期限は、今年の4月までだ。
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