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2.売店広場でダンスショー
ジェットコースターを降りた後は、売店で休憩する事にしていた。
売店のある広場には、買った物を座って食べられるように、白いプラスチックのテーブルとイスがたくさんあるが、ヒビが入っているのも多い。座る面に雨水がたまっていたり、脚の長さのバランスが悪くてガタガタいったり、あまり快適じゃない。
でも、オレたちには居心地が良くて、いつも決まった位置の席について、閉園までしゃべっていた。コンビニの駐車場にたまるよりは、マトモだと思う。
予想はできていたが、今日はその売店広場も混んでいた。
やっぱり小さい子供とそのお母さん、お父さんが多いが、アトラクションのあるエリアに比べると、お年寄りも増えたように見える。
40年の歴史と言うくらいだし、リッキーのお父さんやお母さんも、子供の頃によく来たと言っていた。
普段は来る機会が無くなっても、閉園すると知って、きっとなつかしくなって、おじいちゃんおばあちゃんも一緒に、家族で来ているらしい。
たまたまいつもの席が空いたから、リッキーに指差して教えた。
「席取っといて。オレ買ってくるから」
「お! 作戦みたいでかっこいいな!」
「いいから早く行って」
そうするのが当然だった。
青と緑の間のくらいの変な色に塗られた、小屋みたいな売店に並ぶ。
「あらっ、マーくん!」
オレの番になると、売店の中からおばちゃんが声をかけてきた。昔からずっとここで働いている人だ。この歳で「マーくん」は恥ずかしい。でも、今さら訂正できない。
「いつものやつね?」
オレが何も言わなくても、もう顔と名前だけじゃなく、注文する物まで覚えられている。
「リッキーは?」
「いるよ。向こうで場所取り」
やっとオレも返事ができた。
おばちゃんは少し向こうの方を見て、すぐリッキーを見つけたらしい。
「やっぱり2人は来てくれたのね。今日が最後だから、顔見れておばちゃん嬉しいな」
寂しい、じゃなくて、嬉しい。
ちょっと意外だった。長く働いていた場所が無くなるのに。
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