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「やだやだやだやだやだああああ!ちょ、なんでこっち来るの!?え、待って、どうしよう道忘れた、迷った!うわああああああああああああああああああああ!?あ、あ、し、しんだ……」
パニクったあとで捕まってゲームオーバーになるところを見せ、派手にがっくりと落ち込んだ声を出す。画面に溢れる、励ましのコメント。少しオーバーな演技をしすぎてしまったかなと思ったが、ファンたちには概ね好評に受け取られたようだ。まあ、RENAはオーバーアクションがテンプレのキャラクターなので、キャラとしては大正解というのもあるのだろうが。
――よし。いっぺんゲームオーバーは見せたし、次はいいだろ。……フロアのメモを確認、と。
画面にはゲーム映像と、キャラクターのイラストしか表示されていない。実際私が手元で資料や台本を確認していることはファンたちにはわからないようになっている。
さっき怨霊に追われてゲームオーバーになったのはわざとだった。こういうゲームでは素直に進みすぎるより、一度捕まって派手にやられるところを見せた方がファンを楽しませられると知っているからだ。
とはいえ、毎回毎回、同じオバケに捕まって似たような死亡シーンばかり流しても飽きられてしまう。次は今の怨霊を頑張って避けて、先に進まなければ。道に迷ったのは事実だが、実はマップに関してはパソコンの横でちゃんとメモを取っている。今度はそれを見ながら進むので、多分間違えずに階段まで到達できるだろう。
「……次は、負けません!えっと、今メモを確認しました。うん、さっき逃げた時うっかり左に行っちゃったから駄目でしたね。右に行って、左に行って、突き当りの部屋の中に階段……と。よし。今度は迷子になりません!逃げ切ってみせますよお!」
私がしゃべると、コメントが再び流れてくる。私が大好きな、8号さんのコメントも。
『レナさんは同じミスを繰り返さないから、動画や放送がダレなくていいですね。すごく努力してるんだろうな』
一番自分が見て欲しいのは、本当は声が可愛いとか、ゲームが上手いとかじゃない。このキャラクターを維持するために努力していることだった。だから、それを褒めて貰えるのは本当に嬉しい気持ちになる。
「8号さん、皆さん、ありがとうございます!さあ、リベンジリベンジ!」
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