エンジェルに魔法はいらない

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 私の生放送でも、そのようなコメントを投稿する者達で溢れた。後から思えば、そもそも私達をよくわかっていなかったアンチたちが、これ幸いと“ネットアイドルを叩くハンマー”を手に入れた形になったのだとわかる。彼らにとって、私達の正体が美人かそうでないかなんてどうでもいいのだ。ただ素性を晒させて殴りたいだけ。晒せばどんな顔だろうとブスだと笑うし、晒さなければ“逃げている”“隠蔽体質”だと叩く。ようは、どう立ち回っても殴られ続ける。一体、どうすればいいのだろう。 ――やめて。もうやめて。 『いつまで仲間の不祥事から逃げるつもりなんですかぁ?』 『お前も顔晒せよ、ブスじゃないってならさあ』 『まさか、あんたも中年デブスなのに、アニメ声出してネットアイドルしてるとか言わないよなぁ?』 『ババアとデブスはひっこめ!!!!!!!!』  生放送をしても、動画を投稿しても。ファンの声が埋まるほど、アンチの声が溢れて大荒れになった。次第に私は、アイドル活動をするのが恐ろしくなってしまったのである。  顔は晒していないが、声は晒しているのだ。もし、派遣先の会社で、あるいは町で、私の声を聴いた人が“あいつがRENAなんじゃないか”と気づいたら。本当の私が、美人でもなんでもない不細工な四十路手前の女だと知られたら。その正体を、誰かに拡散されでもしたら。 ――なんで?どうして?私、悪いことなんかしてないのに……!  美人でなければ。痩せていなければ。社交的な性格でなければ。アイドルであることは許されないのか。みんなを楽しませたいと思ってはいけないのか。華やかな舞台に立っている、それだけで叩かれなければいけないのか。  もう自分も、この業界を引退するべきなのではないか。そう思い始めていた、その時だった。 『いい加減にしてください!』  彼が。8号が、アンチたちに一喝したのだ。 『皆さんは、RENAさんの何を見ていたんですか?カワイイイラストの向こうに、別の実在の人がいて演じている。そんなこと百も承知で応援してきたのではないのですか?その人が、イラストそっくりの女の子でないことなんて最初からわかりきっていたことでしょう。それでも応援してきたのは、彼女の声が可愛かったから?それだけではないはずです!!』 「8号、さん……」
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