ばける、ばける。

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ばける、ばける。

 それは、僕がまだ小学生の頃のこと。  夏休み、僕は大ピンチに陥っていた。何故ならば休みの前に、クラスの友達にある大見得を切ってしまったのである。 『お化けなんかいるわけないし。そんなもん信じてるなんて、お前らが気だなー』 『んだと!?』  とあるホラー映画について友人と盛り上がっていたところ、クラスの高橋くんが僕に絡んできたのだ。高橋くんは頭はいいけれど嫌味なやつだった。リアリストを気取っていて、サンタクロースや異世界、魔法やオバケといったものを全部否定して回るような人間だったわけである。  多分、そういうものを信じない自分をかっこいいとでも思っていたのだろう。  本当に大人であるならば、他の子が信じているものを無闇と否定したり、夢を壊すような真似などしないものである。それができない時点で、彼も結構なガキンチョだったわけだが――まあ当時同じくガキだった僕はそこまで考えることなどできないわけで。  ようは喧嘩になったのだった。  幽霊はいる、と主張する僕達。そんなものいねえよバカ、と嘲る高橋くん達。最終的には殴り合いに発展する直前で先生が来て止めてくれたわけだが。 『お化けがいるってなら、証明してみろよ!本物オバケを見つけてみろってんだ、ばーかばーか!』  高橋くんは不機嫌そうに、僕のそんな捨て台詞を吐いた。で、僕も完全に頭に血が上ってしまっていたのでこう返したわけである。 『おお、いいぜ!僕が証明してやらあ、オバケはいるってことを!夏休みの間に、本物のオバケを見つけてやるよお!』  後でやばいと思ったが、もう完全に後の祭りである。売り言葉に買い言葉。僕はこの夏休みの間に幽霊を見つけるという、ハードミッションを課されることになってしまったのだった。  ホラー映画は好きだし、ファンタジーやSFも大好き。アニメや漫画でもそういうものは結構見るし、なんならちょっと難しい小説も読む僕。しかし人生で一度も、本物のお化けに遭遇したことはなかった。  もちろん、どうすれば遭遇すればいいのか、ちっともわからなかったのである。
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