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【くちゃくちゃ】   最後に残ったのは聴覚だった。  痛みはすでに感じない。 【くちゃくちゃ】   きっと身体のどこかがかじられているのだろう。  と、思う。  まさか、本当に狼だったなんて。  薄れゆく意識の中でエマは思った。  狼男。まさか本当にいたなんて。 『いただきます』  大きな口と、その中に見えた大きな喉●●●。  それがエマの見た最後の光景だった。   【くちゃくちゃ】  【くちゃくちゃ】  【くちゃく……】   音が途絶え、エマの意識が奈落の底へと落ちるのに時間はかからなかった。  空には大きな満月が【ぽっかり】といった様子で浮かんでおり、パリの町を淡く、そして黄色に包み込んでいる。  
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