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昼間の日差しが嘘のように涼しくなった夜。事件はとある一室で幕を開けた。
部屋にいる人々の中で一番の年長者の猛利大五郎が大きな声を出していた。大五郎はその名が表す通り、大柄で鋭い目の男であった。
大五郎の正面に座っている女性2人は、年が異なるけれども、それぞれの雰囲気はよく似ていた。彼女たちは大五郎のほうを向いて耳を傾けている。
心を落ち着かせるためなのか、大五郎は飲み物を口にしてから言った。
「うまく化けたものだな。たとえ、名探偵は誤魔化されても俺の目は騙されんぞ!」
「「…」」
ここに名探偵を支えるワトソン役はいなかった。代わりに若い女性が大五郎に反論する。
「名探偵って誰。騙すって何よ」
「正々堂々と勝負したらどうなんだ」
「正々堂々? どういう意味?」
「これを見てみろ」
「え?」
大五郎は自信たっぷりに叫んだ。
「犯人はこいつだ!」
女性は何も言わずに大五郎を見つめていた。大五郎は続けて言う。
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