ウグの里帰り。クズの親孝行。

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『でも、常識的に考えたら……いくらウグちゃんがご両親にとって最愛の犬だったといってもね。会いに来てくれるなら、ワンちゃんよりも実の娘であるあなたの方が嬉しいんじゃないの? 死に別れてもう随分経つのよね?』 「そんなことないってぇ。私がどんだけクズだったか、あなたも忘れてないでしょ?」 『まぁねぇ……だとしても、ねぇ』  いまいち納得がいかない様子だが、それ以上の追及は諦めたようだ。というか、私のような成人大の体はいくら霊魂と言えど鏡の魔女の用いる鏡を通り抜けることが出来ない。ウグは小型犬のパピヨンだからこそ、私達の魔法で地上へ送ることが可能なのだ。 『ご両親のために協力するのはいいけれど、一度だけよ。ずーっとあちらへウグちゃんをお邪魔させるとしたら、ワタシに負担がありすぎるもの。その一回こっきりで、ご両親を慰められるようなメッセージを、ウグちゃんになりきってア、ナ、タ、が、伝えるのよ?』 「えぇ~? ……私がぁ?」 『アナタがやらないで他に誰がやるというのよ』 「テレビとかの動物コンテンツでさぁ、人間が勝手に台詞考えてナレーションで喋らせるのあるじゃない? 私、ああいうのダメなんだよね。物語のキャラクターとして動物キャラが喋るのはいいんだけど、現実の動物に人間がアフレコするの。生身の動物っていうのは喋らないからこそ癒しなんだよ」 『言いたいことは理解出来るけど、こんな非常事態でもご両親のために最善を尽くして考えてあげようとしないって……本当にしょうがない人よねぇ』  鏡の魔女は私に対する呆れを全く隠そうとせず、心からの溜息を吐きだした。まさか提案して今日の内に決行しようというんじゃないでしょうね、と釘を刺されたので、計画は後日改めてという約束にしてお開きになった。
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