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◆5.天狗台
村長が言いました。
「怪物の巣を残らず潰していただきましたのは、まことにありがたいことでございます。あのままでは、怪物が、二匹、三匹と育ってしまうところでした。しかし、逃げた親玉が、今どこにいるのか、あるいは、これから、どこに現れるのか、まったく見当がつきませぬのも困ったことです」
左門は言った。
「現れる場所も問題だが、この化け物のやっかいさは、硬い体や毒爪だけではない。船に上がってきたり、人を海中にひきずりこんだり。異常な腕力があることだ。なまじの手段では、奴の動きを止めることができない。さて、どうしたものか……」
と、左門が言うと、皆、静まり返ってしまいました。左門がしばらく思案して言いました。
「何かほかの武器……弓矢などはないだろうか。それと、海辺に狭まった高い地形は無いだろうか?」
村人の一人が「流れ着いた船に、転がっていた武器が、まだ残っている。その中に弓矢があったような気がする」そして「霧浜の端に、天狗台という切りたった大岩がある」と、言ったので、左門は村人に天狗台に自分を案内させました。そして、断崖のような大岩によじ登って、その上から周りを見てみたのです。
天狗台の上は比較的平らでしたが狭く、四方は切り立っていて、見晴らしが良い場所でございました。そこから、恐ろしい事が起きている場所とは思えぬほど美しい霧浜と海の景色が見えていました。
そして、天狗台の周りは、石畳みのような岩場になっております。
左門は、この地形を見て、まことに天の助けと思ったそうでございます。
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