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☆01. 恋の始まり
朝は、五時半に起きる。
夫は朝食は和食派なので、朝から米を炊き、鮭を焼き、ほうれん草を茹でてごまをすりおひたしを作る。味噌汁は勿論おだしからとったもの。あごだしが彼のお気に入りだ。
あのひとは、炊きたての米でないと許さない。
ごまも、既に擦ってあるごまではなく、毎回、ちゃんと自分で挽いたものを、と言いつけられている。
お義母さんがそうだったから、という理由で。
お風呂も沸かしたてがよいとのことで。朝食の下ごしらえをしたら一旦料理は中断し、腕まくりをしてお風呂を洗う。
多いときで一日三回、あのひとはお風呂に入る。
帰宅直後、寝る前、朝起きてすぐ。スマホをいじりながら。
夜は日付が変わる頃に休むので、湯船にお湯ははったまま。ゆえに、毎朝、起きたらすぐに風呂場へ直行し、風呂の湯を抜いておくのがわたしの役目となる。
一度ズルして、前日のお湯をそのままにしておいたときに、……ひどいことになったので懲りている。
――気づかないとでも思ったのか? このおれが。
と何度も。何度も……。
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