第1跳 紙飛行機と出会いの春

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第1跳 紙飛行機と出会いの春

「く、悔しい! 私、今まで誰かに走り負けたことないのにぃ!」  やれやれ。このオレンジ色ショートカットの娘は、たかが体育の50M走ごときでいちゃもんつけるのか。  されど、こうもギャーギャー噛みつかれると、ただの運動場の50M走とも私は思えないんだ。  悪く周りに目立つし、私としても迷惑だ。  泣きじゃくる体操着の同級生に戸惑った私は、ウンザリして校舎と屋上を見上げた。  ヒラヒラ屋上から滑空する白い紙飛行機だ。今は授業中、ということは誰かサボって屋上で日向ぼっこか。あそこは立ち入り禁止だったはずだ。  眼鏡をかけた短髪痩身の体育教官、確か名前は、タカノ先生が空に向かって怒る。 「コラァ、貴様ァ! 紙クズを生徒のいるグラウンドに投げるとは、良い度胸だな。今授業中だぞ、さっさと教室へ戻らんかァ」 「あはははは、こいつは失敗だぜ」  無意味な紙飛行機の投下、中学生にもなって何をやっているんだか。それも体育教官をおちょくって笑っている。どいつもこいつも子供か。私は呆れつつも、落ちてきた紙飛行機を1機拾った。  紙飛行機の勇者が先生に一撃を与えた事実で、バカ男子どもはゲラゲラ大爆笑だ。すぐにチャイムが鳴り、私は更衣室へさっさと帰った。この手の紙飛行機はゴミ箱に捨てた。  はしゃぐのは小学生までで辞めた。リトルリーグで野球をやっていた頃と、今の私は違う。  静かに目を閉じて、苛立っていたために呼吸を整えた。はぁ。
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