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その決意のまま、2年経った。今こうして、私に走り幅跳びを教えている。天性のジャンパーだ。
そう思った私はついつい尋ねた。
「ホンマさんは中学になって1番になったんですか?」
「いいや、まだなってない。1年の頃は先輩が3人走り幅跳びをやっていて、選手にすらなれなかった。2年の頃は教えられた跳び方が合わなくて、足首を挫いて結果にならなかった。その後は、陸上マガジンや大会記録映像を見たり、カメラに撮ってもらったり、出来ることは今までやってきた。最近、ようやく自分の跳び方が分かってきた」
周囲の影響は大きい。
だけど、教えられたことが正しいのか、自分に合っているのか、それすら跳んでみないと分からない世界だ。
私は正しい跳び方を探せるのか。急に不安になった。
「難しいんですね」
「そんなに深刻な顔するなよ、美人が台無しだぞ。俺は俺、お前はお前だ。跳び方を覚えたら空だって超えていけるんだ。……仕方ねえな、今度の市民大会で俺の大ジャンプを見せてやる。特別だぞ?」
照れ屋で子供っぽいホンマさんが、急に格好良い台詞を言った。その大きい手が私の頭を軽く叩く。
え、どういう顔をすれば良いんだろう。
私は陸上や幅跳びより、今のホンマさんの態度が分からない。
彼に赤い顔が見られないように、フジサキ先輩の「集合!」の声がかかるまで、私はジッと俯くことしか出来なかった。
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