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大会後は恒例らしい青葉東中オンリーBBQ大会だ。
1年生歓迎会を兼ねている。小学校の宿泊体験以来になる野外での料理だ。
こういう時に、ヒトとしての本性が出るものだ。ナツミはすごく器用で、屋根の着いた台所で、華麗な包丁さばきを見せている。
私はそこそこしか包丁を使えないので、他の先輩たちや同級生たちと、調理や配膳に回った。
天才ナツミは補佐いらないとのことだ。頼もしいんだか、羨ましいんだか。
向こうの調理場では火起こしをしている。そこでミクラ先輩が、ホンマ先輩を怒っていた。
ムッとした釣り目で、ニヤニヤ笑う変態王子を女性陣の代表として睨む。
「ホンマさん、エッチな本を燃やしていませんよね?」
「去年の話じゃん。今年はちゃんと改心したぜ」
「本当ですか? フジサキ先輩はさっきからどこに行っているんですかね?」
「トイレで……摘んでいるね」
「……そういう下品なところです」
盛りのついた小学9年生は、中学2年生のミクラ先輩の冷ややかな視線にも動じない。
知りたくなかったけど、王子様のメンタルが強いことが分かった。
みんな席について、おしゃべりをしながら、それぞれにご飯を食べる。
男性陣の紅茶ベースの炭酸飲料を混ぜて、ゲーム感覚で飲むのは止めた方がいいと思った。ナツミは飄々と飲んでいたけど、食事の後半でトイレに長い時間かかっていた。
悪ノリの中。何だかカレーライスが少し食べにくい気もする。
女性陣でも話し続ける面々がいる一方で、ハセナナ先輩のように黙って食べている人もいる。
一口食べると、すごく美味しい。外で作ったからだろうか。それとも、王子様がかかわった料理だからだろうか。
「アヤカちゃん、ホンマさんに熱い視線ですねぇ」
「うわ、ナツミ!」
やつれた顔で現れたナツミの不意打ちを食らう。
私がホンマさんを意識するのに、その一言だけで十分だった。この友人は私の性質をよく知っている。
恒例のBBQも片づけが終わり、最後になった。
対面した先輩たちへ新入生の自己紹介が始まる。もう私の番だ。
「ササノアヤカです。将来はホンマケンタさんみたいな、すごいロングジャンパーになります!」
「うぇーい。ケンタ、やったじゃねーか! 恋愛禁止だぞ! まぁ、いっか!」
フジサキ先輩の雑な煽りだ。部員たちは爆笑した。
照れて顔を隠すホンマさんを、先輩たちは次々に小突いた。熱いラブコールが尾を引いた。
私は隠し事が出来ない自分に苦笑いした。やってしまった感。自分で何を言ったか、
ようやく気付いたのだ。真っ赤な顔を下にして、身体を震わせた。
隣りに立つナツミが、私のお尻を指でつねった。痛っ。すぐさま、彼女は小声でささやく。
彼女の発言は、小さい復讐だった。当然、私は涙目になった。
「笑いなさいよ。ユーキャンフライ、ネクストゲーム」
「そういう意味で言ったんじゃないよ……もう」
ただナツミは、いつも大真面目だ。
100Mで全国優勝します、隣に立つナツミの強心臓には敵わない。平然と大言を口にするあたり、ナツミにはブレがない。
私はどうなんだろうか。笑うことに、もう一度チャレンジした。 あぁ、今度も涙目の笑みだ。
強い言葉に、まだ自信が持てないんだ。自分の弱さを自覚した。
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