第2跳 紙飛行機とロングジャンプ

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第2跳 紙飛行機とロングジャンプ

 19の『あの紙ヒコーキくもり空わって』を口ずさんでいた。  あれからナツミに追い回されて、私が隠れているところへ必ず紙飛行機がやってきた。  空から助けに来るこの子たちに私は愛情が芽生えていた。  並べ終えると、机の紙飛行機たちに、自然と頬が緩む。まるで差出人不明のラブレターに喜ぶ乙女だった。頬杖でニヤニヤだ。  ナツミがジドっとした目で、紙飛行機を机の上に並べる私を見ていた。よほど気色悪かったのだろう。  その1機を解体して、内容を見た。やはり、陸上部員募集中の文字だ。勧誘の腕は紙飛行機職人の方が、ナツミより格上だ。  私の中で密かに降格したナツミは、紙飛行機さんへ便乗作戦に替えた。 「あのさ、紙飛行機いくつ集める気よ。さっさと陸上部に来いと、紙飛行機さんもおっしゃっていますよー、アーヤーカーちゃん?」 「リ、リクジョウブニハー、ハイリマセーン」  ナツミから明後日の方向を見る。謎のカタゴト作戦だ。  ここでナツミたちの勧誘に乗ってしまうと、私の反抗活動(レジスタンス)は終わりだ。一方的な圧力に負けるのは嫌。  同じ負けず嫌いな性格のナツミはすぐ気づいた。  一瞬考えてからのグフフフ笑い。目が怖い。  何かとっておきの甘い言葉を持ってきたらしい。甘すぎるよ、小沢さん。  そして予想外に、優しく微笑んだ。私が拍子抜けするくらいの柔らかい笑みだ。 「陸上部にはまだ入らなくていいよ」 「はい?」 「私、この紙飛行機作っている男の先輩を知っているよ。ねぇアヤカさー、放課後、一緒にこの先輩のところ行かない? 百聞は一見に如かずだよ!」 「ああああ、会えば分かるって言うの?」 「会っても分からないかもしれない。でも、1度会ってみるのは大事なことでしょ?」 「……行く。だから誰か教えて」  ぶっきらぼうな物言いだが、実際私は期待していた。  押してダメなら引いてみる作戦成功で、ナツミは花が咲いたように笑う。  百聞は一見に如かず。最初は陸上部の勧誘でなくても、紙飛行機さんに会うだけで良い。  誰の入れ知恵だろうか、ナツミは私に別ルートのきっかけを提案した。  返事をすると、私も冷静になった。  そうか、ナツミは春休みから陸上部に仮入部していた。  紙飛行機の職人を思い出したのだろう。後で知ったけど「陸上部にはまだ入らなくていいよ」はその人の言葉だったらしい。  その彼は紙飛行機作りと同じように、無垢な少年のように優しい対応で迎えてくれた。
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