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第3跳 紙飛行機と初フライト
「教えた通りに跳んでみな」
ホンマさんは滑走路に立つ新型機の離陸を、優しい眼差しで見守ってくれた。
走って踏み切って跳ぶ。簡単な話ではないか。
私は勢いよく駆け出し、そして踏み切り板を思い切り蹴った。
あれぇ。
身体が浮かない。
砂場に顔面からダイブだ。野球のヘッドスライディングが身に染みついていた。
砂の味、思い切り噛んだ。激マズイ。ペッペと吐き出す。
「うぅ、足が浮かない」
「アヤカ、ナイスなスライディング。アハハ、ごめん嘘」
「ひどいです!」
「加速は悪くない。後は身体がついてくれば、きっと跳べるさ」
半分笑って、半分指導してくれる。ホンマさんは気負わないように配慮してくれた。
でも、先輩の心遣いを知っても、私は納得いかなかった。
凹む。
やることはストレートなのに、陸上はこんなに難しい。砂を払い落しながら、顔をホンマさんへ向ける。
「センパイは何で走り幅跳びを選んだんですか?」
「はいはい、センパイ禁止。ホンマさんでいいよ。あー、まだ言ってなかったか……」
先輩呼びが嫌いなホンマさんは、少し不機嫌な口調になり、昔を思い出す遠い目をした。
沈黙したホンマさんを怒らせたと思い、姿勢を正した私は怖くなった。
でも、童心の目はいつものままだった。
ホンマさんはゆっくり語り出す。
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