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「遅れてごめんなさい、健介さん。教室を出ようとしたところで友だちに声をかけられて、少し話し込んじゃって……」
「いや、そんなに『遅れた』ってほどじゃないから。それより、本当にいいの? 俺が映画を観に行きたいだけなのに、わざわざ付き合ってもらっちゃって……」
「大丈夫です、どうぞ健介さんのしたいように! 私も無理なことは無理って言いますし、でも出来る限り付き合いますから。ばっちり守ってみせますからね」
真森優子は胸を張ってみせる。魔法使いとしての責務を果たすのだ、と意気込んでいるようだ。
しかし女性が胸を張れば、自然とバストを強調する格好になり、男の俺から見ると、彼女が女であることを改めて意識してしまう。
同い年の可愛らしい女の子と二人で映画を観に行く。これでは、まるでデートではないか。
そんなことを思いながら映画館に着くと、予約していた座席にトラブル発生。映画館側の手違いで、こちらが指定していた場所よりも二列後ろの席になってしまうという。
「これが今日の不幸のひとつでしょうね。こういうのが起きないよう、私がいるはずなのに……」
「『ダブルブッキングで席がなかった』じゃなく『席が違う』程度なら、たいした不幸じゃないよ。ほら、これこそ優子さんが一緒にいるおかげで、不幸の程度が弱くなったんじゃないかな?」
「そう言ってもらえると、ありがたいですけど……」
いざ席に着いてみると、そこはいわゆるカップルシートだった。
「なんだか私たち、場違いですね。この気恥ずかしさも、不幸のうちなのかな……?」
「いやいや。もしも俺だけだったら、男一人でカップルシートなんて、もっと恥ずかしかったはず。でも優子さんと一緒なら、傍から見ても不自然じゃない。これこそ優子さんの存在に守られた、ってことだよ」
「健介さん、それ本気で思ってます? ちょっとこじつけっぽく聞こえますよ?」
映画の上映中は「アンラッキー7の呪い」らしきものも発生せず、映画館を出た後は帰宅。一緒に食事するだけでなく、彼女は俺の部屋に泊まり込む。
「寝ている時は無防備ですからね。大きな不幸に見舞われたら大変だから、そういう時こそ私がそばにいて、呪いの力を弱めないと!」
と真森優子が言うので、彼女の言葉に甘える格好だった。
もちろん、あくまでも「一緒の部屋」というだけであり「一緒のベッド」ではない。彼女の方にそんな気持ちはないし、俺も強引に女性を襲うような男ではないので、ただ平和に眠るだけだった。
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