8.7歳の茶会の実情

1/1

115人が本棚に入れています
本棚に追加
/90ページ

8.7歳の茶会の実情

 7歳を迎える高位貴族の子息子女が招かれる王城の茶会は、ある意味高位貴族の子供達にとっての登竜門である。  それまでの各貴族家の教育がどの程度だったのかを王家に試される場でもあるからだ。  試す側である王家にとってはこの先王国を背負って立つ有能な子供達を選別し、将来の王を支える側近候補を選ぶ場でもある。  ただ仲良くできるだとか、見目が良いとかではなく現時点でどれだけ優秀かという事や後々の伸び代迄査定されるのだから、特に子息達の両親にとっては気の抜けない場でもある。  女の子達の方は、第1王子には婚約者がいるが、第2王子なら空きがある。  そうでなくても将来のお婿さん候補を見定める場でもあるため張り切っているのは否めない・・・  男の子達は若干緊張気味で、女の子達はワクワクしながら王族の登場を待ちつつ両親と共に見事な薔薇の咲き乱れる花壇を背にお行儀よく並んでいる。 「お母様、ウィリアム様はまだかしら?」  シルフィーヌも例に漏れず、ワクワクしながら待っているが彼女は第1王子の婚約者である事が周知の事実なので他の女の子達のようなギラギラ感()はないのだが、今まで1度も会ったことのない婚約者の訪れを今か今かと心待ちにしているようで、普段以上に美しく装った母の手を引いて頬を緩めながら質問する。  彼女はウィリアム本人に会ったことはなかったが、姿絵で何度も確認しているし為人は王宮からやって来る家庭教師達が親切丁寧に教えてくれる為元々親近感を持っていた。  国王陛下と父親である公爵が事件を起こさなければもうちょっと早めに会えたかもしれないのだが――因みに双方の母達の配慮により彼女や周りの者達には婚約時の事実は伝わっていない。  彼女の礼儀作法が整うまでは王子とは会えないとだけ言い聞かされて育った為、期待も半端ないのである。  元々王妃と公爵夫人は幼馴染みで親友同士でもあり未だに茶飲み友達だが、婚約の経緯が酔った勢いである事と、『そもそも生まれてもいない赤ん坊と一国の王子を婚約させるとは何事かッ!』とまぁ、至極ご尤もな事で腹を立てたのであって他意は無くその事件以来、かかあ天下になってしまった王家と公爵家だが国王と公爵の身から出た錆なのでその辺りは誰もが突っ込まないのが双方の使用人達のお約束事だ・・・
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!

115人が本棚に入れています
本棚に追加