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11.気が付けば転生者!?
そしてウィリアム王子が昏睡状態から目覚めた時にヒロインの代わりとして手を握りしめ1番最初に話し掛けるのが公爵令嬢シルフィーヌである。
『ウィリアム様、お気を確かに・・・』
目に涙を浮かべながら彼の目覚めを喜ぶシルフィーヌに違和感を覚えながらも、頷くウィリアムが彼女の顔を真っ直ぐに見つめる。
『殿下! ああ良かった・・・やっと気が付かれたのですね?』
『ありがとう、シルフィーヌ嬢。暗闇の中で呼びかけて光の当たる場所に俺を誘ってくれたのは君か?』
『ええ。そうですわ。ずっと貴方のお側に居たのは私ですわ』
シルフィーヌの頬を一筋の涙が伝い、それをウィリアムが未だ回復していないためか、力の入らない指先でぎこちなく拭う・・・
『ウィリアム様・・・』
その手を白い両手で包み込むと、シルフィーヌはゆっくりと自身の頬に押し当てた。
×××
「私がッ! ウィリアム様! 私が、オリヴィエが貴方に呼び掛けていたのよッ!」
シルフィーヌがその画面に向かって叫んだ所で目が覚めた。
見回せば、見慣れた猫足の白い家具に上品なカーテンが垂れ下がる天蓋付きのベッド。
窓からは月の光が優しく密やかに床に敷き詰められた毛足の長いピンク色の絨毯を照らしている。
「え・・・私、シルフィーヌよね?」
思わずパチパチと瞬きして起き上がる。
ベッドの脇には専属侍女の一人が座ったまま、首を項垂れている。
夜も更けた為眠さに耐えられなくなったのだろう。
少し身体が揺れているように見えた。
思わず自分の手を見つめるが、残念ながらそこにはガラス質の画面をした機器は見当たらない。
「え。私シルフィーヌに転生しちゃった? ・・・嘘!? 何で?」
暗い部屋で呟く声が闇に溶けたが、同時に窓ガラスが
『コツン』
と鳴った。
『?』
気のせいかと思って首を傾げるともう1度、同じように
『コツン』
と音がする。
不思議に思いベッドから立ち上がると、バルコニーに続くその窓に恐る恐る近づくシルフィーヌ。
窓の外のバルコニーの手摺の上に大きな満月を背にして、初めて見た時と同じ白い衣装を身に着けたウィリアム王子がチョコンと座っていた――
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