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12.真夜中の訪問者
「よう! 婚約者殿、大丈夫か?」
「えぇ?! ウィリアム殿下?」
驚いて口をあんぐり開けていたシルフィーヌだったが、直ぐに窓の鍵を開けるとバルコニーに素足のまま進む。
「急に眼の前で倒れたからびっくりしたぞ」
片手をヒラヒラとさせて笑う彼。
因みにココは公爵邸の3階であり、バルコニーの手摺は非常に細い。
「殿下ッ! 危ないのでこちらに降りて下さいッ」
見ているだけでシルフィーヌは背筋がゾクゾクする。
「いや、ここでいいわ。なあ、シルフィーヌ。お前ひょっとして俺と同じ転生者か?」
首をコテンと傾げるウィリアムは少しばかり幼く、先程シルフィーヌが見た夢に出てきた精悍な顔つきのイケメンには若干物足りないが、近い将来確実に近付くだろうと思える様な風貌をしている。
「え、え、ええええぇ?! 今なんて?」
「いや、だからさ転生者じゃね~かって聞いてんだよ。ひっくり返る直前に『乙女ゲーム』って呟いただろ?」
「え、殿下と私ってあんなに離れてたのに聞こえたんですか?!」
思わず両手で空間を作って見せるシルフィーヌ。
「ああ。魔法であの場の音は殆ど拾って聞いてたからな。お前が倒れる直前にそう呟いたのはしっかり聞いたぞ? だから転生者だろ? ここが乙女ゲームの世界かどうかは知らんが、俺も転生者なのは間違いないからな。こうやって態々出向いて本人に確認しに来たんだ」
「・・・はぁ」
なんだろう、ウィリアムってこんなヤンチャだったのか? と思わず眉を顰めるシルフィーヌ。
「え~と。じゃあ殿下も転生したってコトですか?」
「おう。赤ん坊の時から気が付いてた。前世は日本人だったな。しがないサラリーマンでさ、病気で死んだみたいだ」
「・・・凄いハッキリ覚えてるんですね。」
ヘラヘラ笑う殿下に呆れてしまう。
「まーな。お前は今日思い出したのか?」
「ええ、まあそうです。しかもゲームの事は思い出しましたが、未だに他はハッキリしません。女子校生だった気はしますが・・・」
う~んと首を捻る公爵令嬢。
「そっか。まあ、追々思い出すかもな。ショックだったかもしれんが、見た所もう大丈夫そうだな」
「あ、はい。お陰様で」
思わずペコリと頭を下げるとぷぷッと彼が吹き出したので不思議に思って顔を上げると
「そのお辞儀。日本人だなと思ってさ~。ココじゃそんな事するヤツ居ないだろ?」
「あ・・・そっか」
彼女は思わず顔が赤くなった。
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