13.真夜中の約束

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13.真夜中の約束

 「じゃあ、明日改めて見舞いに来るから今日はもう休めよ」  クスリと笑いながら手を振るウィリアム。 「殿下はどうするんですか?」 「帰る。内緒で出てきたからな。バレたらヤバい」  ヘヘッと笑う彼はどう贔屓目に見たっていたずらっ子だ。 「馬車? 馬?」 「ばっかだな。そんなモン使ったらバレるだろ。魔法に決まってるじゃないか」 「え?」 「お前の侍女が寝たまま気が付かないのも俺の魔法だ」 「えぇ?」  目が点になったシルフィーヌを見て、フフンという感じで腕組みをするウィリアム。 「魔法は得意だからな。ここに来たのだって転移魔法だ」 「・・・えぇ?」 「人間鍛えれば何とかなるッ!」  ビシッと指を刺されて思わず背をピシッと伸ばしてしまう公爵令嬢。 「何を思い出してパニクって気絶したのかは明日教えて貰う。じゃあ、さっさと部屋に戻れ。あ、窓の鍵は直ぐに閉めろよ不用心だからな」  妙に世話焼きの殿下である。 「わ、分かりました。では失礼します」  またもやお辞儀をすると、そそくさと部屋に入り窓の外を覗くと 『鍵だ! 鍵!』  手摺の上に座ったまま口をパクパクしている少年の姿が目に映る。  彼女が窓の鍵を閉めると、彼は(うなず)いて手を振った。  一瞬だけフワリと彼の身体が光に包まれ、その場所にはもうその姿は見えなくなった・・・ 「転移魔法って・・・魔塔の(あるじ)クラスの扱う特級魔法じゃないの・・・王子ってまだ9歳よね?!」  部屋の中で、信じられないものを見たシルフィーヌはしばらく呆然としていたが、やがて自分の格好が薄衣1枚のままだったことを思い出し、慌てて布団に潜り込む。  寝たままの侍女は気が付かなかったようで、思わずホッとため息をついたが・・・ 「え、でもゲームの中じゃウィリアムってそれ程魔法は使えなかったような気が・・・第2王子のアダムの方が魔法は得意だったよね? しかも転生者だって・・・あ、魔法で音を拾って聞いてたって言ってた? ええぇ? それだって風の上級魔法じゃんナニソレ? え? え? どういう事?!」  シルフィーヌは色々なことが気になってそのまま目が冴えてしまい、彼女が再び眠りについたのは明け方近くだった。
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