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22.乙女ゲームの謎
「つまり、フィーは乙女ゲームの中でヒロインが王太子妃になれたのは、国王陛下の差し金だったからだと思った訳か?」
「うん。そうなの」
二人で仲良くベッドに並んで座り、天井を睨む。
「だって私とウィルの婚約は、陛下とお父様の間で交わされた魔法契約でしょう? 普通の貴族間の婚約とは全く違うんだもの」
そうなのだ。
普通、婚約は形式に則った婚姻誓約書を結び、書類を神殿と貴族院が1通ずつ預かる。
そして王家は貴族院の管理官経由で回された書類を確認し、その婚約に問題がないかを精査した上で問題が無ければ国王陛下、もしくはそれに準ずる王族――普通は王妃――がサインをして貴族院に戻され、管理官が厳重に保管する。
その経緯に通常魔法は使用しない。
魔法契約と呼ばれるのは契約に関する保証の枷のような魔法で、その契約はよほどのことがない限り破棄できなくなる。
例えば契約内容自体が違法であったり、契約した当人が存在しなくなるような出来事がない限り魔法が解けることが無いのだ。
ウィリアムとシルフィーヌの場合は婚姻出来ない状態、例えばどちらかが死んでしまったり女性側が神に仕える修道女になる等だ。
シルフィーヌが公爵令嬢ではなく平民になったとしても身分はどうあれ婚姻そのものは出来る状態なので魔法は無効にはならない。
生きて結婚できるという事実さえあれば良いので、女性側が処女性を失おうが男性側が大怪我をしようが契約は生きている――
ある意味恐ろしいとも言えるのが魔法契約なのである。
だからこそ一国の王子の婚約に非常に厄介な魔法契約を使った事に腹を立て、王妃と公爵夫人がキレて夫達を厳しく叱ったのだが・・・
本来そんなに簡単に使うようなモノではないのである。
「だからゲーム上でシルフィーヌは断罪されて修道院に送られないといけなかったのかもって思ったのよ。公爵家の人間を修道院に送るなんてことが出来るのは公爵家当主か王族の家長、つまり国王陛下くらいにしかその権限が無いでしょう?」
「・・・成る程な」
「だから今日のお茶会の席で王妃様が言ってた『陛下が怪しい』っていうのが凄く引っかかったの」
「現時点ではお前に何の非もないからいくら何でもそれはあり得ないが、おかしな事が起こりかねないって警戒したほうが良いって事だよな?」
ウィリアムの言葉に頷くシルフィーヌ。
「多分だけどアボット家のオリヴィエ嬢がヒロインだと思うの」
「よくある名前だが、俺にコナ掛けてくる下位の貴族の養女って時点で間違い無いだろうなぁ。新入生じゃなくて途中編入ってのが、ゲームと違うけど」
「ウィルに手作りクッキー持ってくる『オリヴィエ』って名前の女性が他にいるの?」
思わず渋顔になるシルフィーヌ。
「いるわけ無いだろッ!」
「だったら、間違い無いわね」
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