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23.強制力の恐ろしさ?
「現実では起こりそうにないことでもソレがストーリーに関わる事なら無理やりでも起きちゃうっていう『ゲーム強制力』って前に教えてあったよね?」
「ああ」
ウィリアムの片眉が嫌そうに上がった。
「本人達の意志を無視して、ストーリー通りに周りが動くってヤツだろ?」
「一国の王子に手作りクッキー持ってくる時点でおかしいでしょ?」
「・・・あの令嬢の頭がおかしいんじゃ無いってことか?」
「そんな事、平民の女の子だってしないわ。普通に考えて護衛に捕まるわよ」
「・・・確かに。じゃあ、俺の側近達がソレを許してるのもひょっとして、強制力ってヤツか?」
そう思い返せばおかしな事ばかりである。
彼らだって高位の貴族の一員として様々な対応の仕方を幼い頃から学んできているのだ。
オリヴィエが王子に手作りの食べ物を食べさせようと持って来た時点で取り上げ、咎めるのが普通だ。
「なあ、市井で流行ってるアレな、舞台でやってるヤツ」
「うん。悪役令嬢がザマアされて、王太子が真実の愛の相手と結ばれるってヤツでしょ。あれだっておかしいわ。普通なら上演1ヶ月もしない内に内容が不敬罪に当たるって誰かが言い出して差し止め喰らっててもおかしくないわよ?」
「誰もがおかしいって思わない、それも強制力ってヤツか・・・」
あまりにも現実の第1王子に似すぎた赤毛の王太子役に、婚約者の公爵令嬢役は金髪。
平民はウィリアムの婚約者を見たことはないだろうが、婚約パーティーに出席した貴族なら誰もが二人に似ていると気が付くはずだ。
因みにヒロイン役は茶髪だが、実際のオリヴィエ・アボットは赤みを帯びたストロベリーブロンド――
「乙女ゲームは視点がFPG(一人称視点)だったから、ヒロインの髪色とかはあやふやだったのよ。でもゲームやってて偶にヒーロー視点になった時に見たオリヴィエはピンク色っぽかった気がする。あの頃ってその髪色のキャラがイラストでも漫画でもアニメでも凄く流行ってたし・・・」
考えれば考えるほど取り巻く環境がおかしいことに気が付いて、ウィリアムとシルフィーヌは背筋が寒くなった。
「側近と護衛にヤキ入れてる場合じゃ無さそうだな」
「・・・ウィリアム、前世はひょっとしてヤンキーだったの?」
「・・・ノーコメントだ」
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