24. シルフィーヌ・アーバスノット①

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24. シルフィーヌ・アーバスノット①

 私はこのカートレット王国の筆頭公爵家の娘、シルフィーヌ・アーバスノット。そして私の婚約者はこの国の第1王子ウィリアム・カートレットで将来的に私は王子妃になり、ゆくゆくは王妃となる予定だ。  別に王妃になんかなりたいわけじゃないの。  ただ、ウィルと結婚したら自動的にそうなるってだけで・・・   でもね、秘密だけど私もウィルも実は転生者だから現代日本の便利さとか自由さを知っちゃってるからこの世界での王侯貴族の生活が何だか少し違和感があるのよね。  ウィルは赤ちゃんの時から前世の記憶があったみたいだけど、私はそれ程覚えてない。  思い出さないほうが今の生活に違和感が生まれないからその方がいいって教えてくれたのはウィルだ。  彼は赤ちゃんの時から記憶があって大変だったらしい。  だから無理に思い出さないようにしてるけど、偶に高校生だった頃のちょっとした記憶が顔を出すことがある。でもソレも本当に断片的なモノで友達とゲームの事で盛り上がったりしてる場面だったり、学食でお弁当食べてたりその程度だから害にはならない。  でも1番の鮮やかな記憶はこの世界が乙女ゲームの世界に酷似してる事。  彼はそのゲームの中の攻略対象で私の推し・・・っていうと勘違いされそうだけど推し活するほどじゃなくて、あくまでもなんとな~くっていう程度のファンだったの。  ゲームだってやり込んでた訳じゃ無くて、友達に勧められてやってただけ。  今はそんなの関係なくウィルの事は凄く好きなんだけど。だって話ししてても楽しいし優しいし、頼りになるし。  何より一緒に居てホッとするのよ。  最近はドキドキする事が多いけど・・・  でも彼は私の事をどう思ってるのかは分かんない。  だって意外と礼儀正しくて、私に触れてくるのは公式な場か他の人の目がある時だけだもの――   私の私室とかじゃ絶対に距離をとってるのが分かる。  ウィルは中身が元から大人だから私の事なんか子供扱いなのかもしれないけど、なんか凄く悔しくて最近はやたらとモヤモヤするの。  小さい頃から彼は私の前だけでは素を見せてくれてて、やたらとヤンチャで口も悪いけど公式の場では王子様らしく振る舞ってて、いつの間にかゲームの中の王太子よりずっと逞しくて精悍なイケメンになっちゃってて・・・  魔法も多分国1番なんじゃないだろうかって私は思ってる。  しかも誠実で、頭もいい上に強いからとにかくモテるのよ・・・  魔獣討伐の遠征に行く度に彼の行く先は黄色い悲鳴が上がる。  私だって平民の女の子達に混じってキャーキャー言ってみたい・・・  でも好きってバレるのが怖いの。  もし 『子供は相手にしたくない』  とか 『ずっと一緒にいるからそう云う対象じゃ無い』  とか言われたりしたら、って考えたら怖くて言い出せない。  このまま何も起こらなければ彼の婚約者でいられるけど・・・  でも怖い。
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