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2.青い空の下の王子様
彼の目に映るのは、昨日のパーティー会場から姿を消した公爵令嬢シルフィーヌ・アーバスノット。
輝くようなハニーブロンドに、くっきりとした二重の瞼に沿う烟るような金色の睫毛が柔らかく頬に影を落とす。
その閉じた瞼の裏には若葉のような緑の瞳が宝石のように煌めいているのを彼は知っている。
小さな鼻梁は形良くツンと若干上向きでその下に続く小さな唇はポッテリと愛らしく薔薇色で艷やかだ。
白磁のような滑らかな肌と薄ピンク色に染まる頬は化粧もしていないのに薄化粧をしているように見えるから不思議である。
「地味なドレスにダサい丸眼鏡をかけて、髪はひっつめ髪だったもの。仕方ないじゃないの!」
ぷうッと膨れっ面になるのは彼の幼い頃からの婚約者だ。
「なあ、ゲームの『強制力』ってヤツ、これで大丈夫なのか?」
「ウ~ン、どうなんだろう。取り敢えず私がパーティー会場から修道院に向かうとゲームは終了の筈なんだけど・・・」
「あの男爵令嬢と使えん取り巻き共はあの場で捨ててきたがアレで良かったのか?」
「逆ハーでメデタシメデタシじゃないの? まあ、そのルートって本来なら無いはずなんだけど。ウィリアム王太子ルートじゃないとオリヴィエは王太子妃にはなれないけどね」
「そもそも俺は王太子候補であって立太子をしてないんだがな・・・大体において男爵令嬢が王太子妃になれる筈が無いだろう。どう逆立ちしたって高位の貴族子女教育が16歳からじゃあ間に合わん」
「うん、まあそうなんだけどさぁ・・・。なんかもう強制力に振り回されて周りがおかしかったもん。何があっても不思議じゃないんじゃないの?」
そう言ってシルフィーヌは首を傾げた。
「男爵令嬢しかも元平民の庶子が王太子妃なんて周りが正気に戻った時にドン引きどころか、阿鼻叫喚地獄だよ。身分制度が崩壊する。マナーの良し悪し1つで他国との関係だって悪化しかねんのだぞ? 下手すりゃ国際問題を引き起こしかねん」
ウィリアムが忌々しげに鼻を鳴らし、それに合わせるように駿馬が『ブルルッ』と首を振った。
「何だってあんな尻軽令嬢と俺が婚姻しなけりゃならんのだ? 国王も重鎮達もアホか」
「だからソレが強制力なんだってば」
2人は同時にガックリと肩を落とした。
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