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33.攻略対象者のお姉様
その女性の名前はエリーゼ・コリンズ。コリンズ伯爵家の長女である。
コリンズ家は大きな港を領地を持ち、その為他国との交易を昔から担う商人上がりの貴族家だ。
ウィリアムとシルフィーヌは王家の馬車、と言っても視察を兼ねたお忍びという名目の為立派な馬車ではあるが黒塗りで王家の紋章などは一切入っていない4頭立てのモノに乗って、その港を持つというコリンズ伯爵邸のカントリーハウスへと向かっていた。
×××
「じゃあ、攻略対象者の1人である伯爵令息ダニエル・コリンズのお姉さまがその例の本の執筆者なの?」
「ああ。間諜達の調べに間違いはないだろうからな」
「ウ~ン、そんな人ゲームには出てこなかったからモブキャラかしら?」
「うん、まあそうだろうなぁ・・・」
今日のウィリアムの装いは王族らしい豪華な服装ではなく、白いシルクのスタンドカラーシャツにチャコールグレーのウール素材のトラウザーズ、同色のフラノ生地に金糸で小さな羽根の刺繍が前立部分に入ったジャケットを肩に羽織っている。
一方シルフィーヌの方は白い丸襟が上品な薄いミルクティーブラウンのミモレ丈のAラインのワンピースで、ワインレッドの細いリボンタイが締め色なっていて首元からウェストに向けて白い前立てが伸びていて、クルミボタンが飾りになっているものだ。
リボンタイと同じワインレッドのサッシュベルトが背中側で蝶々結びになっていて、スカート部分は白く細いストライプ模様でとても可愛らしい。
長い金髪は三つ編みにして顔はいつもの外出用の伊達メガネだが、いつものような地味なメイクではなく素顔に近いため可愛らしい。
足元は2人共がショート丈の編み上げブーツだ。
向かい合わせに馬車の中で座る2人はお互いの顔を見ながらこれから会うであろう相手を想像して難しい顔をした。
「多分転生者なんだろうが、8冊目なぁ・・・」
「・・・その辺も問いたださなくちゃね」
「「・・・」」
×××
コリンズ伯爵邸は小高い丘の上にあった。
「いい眺めだわ」
「ああ」
馬車が邸の門をくぐり、進む間馬車の窓から見える景色は前世で言うところの地中海の町並みのようで白い壁に青い屋根が美しく、暑さに強い明るい色の木花達が家々の周りで咲き誇る様はまるで観光地のようだった。
馬車は静かに伯爵邸のエントランス前で止まる。
護衛騎士達が、馬から降りて馬車のドアの周りに静かに整列して中の乗客が降りてくるのを待つ。
馬車からウィリアムにエスコートされながらコリンズ邸の敷地に降り立ったシルフィーヌは屋敷の召使い達が整列し頭を下げた更に向こうにいる伯爵夫妻と1人の女性に気がついた。
薄紫の長い巻き毛のその女性は、シルフィーヌの伊達メガネより幾分小さめだが似たような眼鏡を掛けていて視線は分かり辛いが、此方をずっと凝視しているように見えた・・・
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