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3.あり得ない王子様
「これからどうするの?」
馬に揺られながら、シルフィーヌが後ろのウィリアムを振り返る。
「他国へ渡って冒険者活動をする。お前もな」
首から下がる冒険者の身分証であるドッグタグを指差すとニンマリ笑う王子。
「いつの間にギルド登録してたの!?」
「冒険者として登録したのはもう3年くらい前だな。当然本名で登録してるから身分詐称はしてないぞ?」
「えええぇ~・・・それじゃ国境超える時に関所でバレるじゃないの」
呆れ顔になるシルフィーヌ。
「バレても関係ねえ。それに冒険者の身分証には出身国と名前と冒険者ランク以外の記載は無いんだ。王子って記載があるわけでもないから関所は普通にパスするのは何度もやって確認済みだ。それに途中で元王子になるかも知んねぇだろ?」
青い瞳を細めながらニヤリと笑うウィリアムに更に呆れた顔になるシルフィーヌ。
「そうなんだ・・・じゃあ、これから私はギルドへ行って冒険者として登録するのね?」
「いいや、お前のはコレ」
彼が懐をゴソゴソして取り出したのはもう1つのドッグタグ。
「へ?」
「お前が15歳になった時に俺が作っといた」
「え~と、どうやって?」
本人確認があるはずなのだが・・・
「ちょいと認識阻害の魔法を使ってお前に化けて登録しといた」
「・・・ちょっとそれ犯罪じゃないの!」
「バレなきゃいい」
しれっとした顔で渡されたプレートは銀色のチェーンがついていてネックレスになっている。
それをマジマジと眺めて眉を顰めるご令嬢。
「・・・しかもなんで冒険者ランクがDなのよ?」
――1番最初のランクはFである。
「あ~、ツノウサギを何回か狩って報告しといたからFじゃなくなったんだ。怪我や病気をしたわけでもないのに全く活動しない訳にもいかんだろ? せっかく苦労して登録したのに取り消されたりしたら再発行しなきゃいけなくなる」
「・・・その時も認識阻害使ったの?」
「任せろ」
「信じらんない・・・」
「まぁ、細かいことは気にせんでいいから、それを首に下げとけ。関所で見せるからな」
そう言われてしぶしぶネックレスを首から下げるシルフィーヌ。
この王子様とんでもねえ、と思ったのはシルフィーヌだけではない・・・ かもしれない。
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