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35.殿下。それ○女子って言うんですよ
「え~とつまり、転生者と気づく前にあの話しを仕上げたってことか?」
呆れ顔でウィリアムがエリーゼの顔を見ながら首を傾げる。
「ハイ。自分が転生者だと気が付いたのは、夢で見たストーリーを全て文にして書き終えた後で、出版社に送る直前だったんですよね・・・」
遠い目で何かを思い出すように語るエリーゼ嬢は元々本を読んだり、自分で話しを考えたりするのが好きな少女だった。
伯爵家の流通業の傍ら、父親が趣味で集めていた外国の書籍の挿絵が気になり文字を早いうちから学んだことも大きかったらしい。
「いつかは外国の女流作家のように自分の本を出版するんだ、という夢を持ったんです。でも中々ストーリーを思いつかなくて・・・」
ある日、時折夢に見る物語を文にしてみたらどうだろうと思いついたのが6年程前の事。
それから毎日朝目が覚めたら覚えていることをメモする事を繰り返したのだという。
「そしたら、物凄く面白かったんです」
当時12歳の彼女は自分の書いた文を誰かに読んで欲しいと思ったらしいのだが・・・
「12際の子供が書く内容にしては刺激的すぎて、あ、コレは親や弟には見せられないなと思いまして・・・」
何しろ自分の弟が5冊目に出てきてヒロインに攻略されるのである。
しかもエロシーン込み・・・絶対にバレたらヤバイ。
「どうせ誰にも読んで貰えないんなら自分で考えたモノも書いちゃおうと思ったんですよねぇ・・・」
ソレが例の8冊目の逆ハーレムストーリーである。
とんでもない12歳、いやその頃には13歳だったらしいのだが。
「でも何だか勿体なくってですねぇ」
はぁ、と切なげに溜め息を付くエリーゼ嬢。
「つい出版社に送った訳か・・・」
「・・・凄い行動力ですね」
呆れるウィリアムとシルフィーヌ。
「イヤだって、部屋に置いとくと見つかったらヤバいでしょ? かと言って苦労して文字起こししたものを捨てるのも忍びないですし」
「まあ、1年間かけて書いた大作だもんな」
「そーなんですよね~・・・。で、出版社に送る荷物を作ったその夜に自分が転生者だった事を思い出しまして」
「ふうん。前世を思い出したのか」
「はい。前世は同人誌大好きオタクでしたね」
「「・・・・・・は?」」
「何ていうか、逆ハーレムとか、後はBLモノとかも大好物でして・・・絵も書いてましたね~、所謂『腐女子』ですね~。あ、今はその傾向は随分薄れてますけどね」
「「・・・」」
ホントかいな? と疑いの視線を彼女に向けるウィリアムとシルフィーヌ。
だってあの8冊目が・・・ ねぇ?
「で、どうしてフィーをやたらと見てたんだよ」
「あ。私、絵師としては百合もアリでして、シルフィーヌ様は創作意欲を唆るなぁと・・・」
思わず婚約者を自分の後ろに隠してしまった殿下である。
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