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36.んで? 強制力を打破するには?
「あの話が歌劇になったんですか!?」
自分の書いた原稿が本として出版されたのは知っていたが、劇になった事は初耳だったらしく、驚いてつい大きく開けた口を自分の手で慌てて塞ぐエリーゼ。
因みに出版社には作者だという事は知らせるつもりは無いらしい―― 自分で考えたストーリーでは無いからだそうだ。
そこは作家としてのこだわりだそうである。
「ああ。オマケにやたらと流行ってな。お陰でポッと現れた『ヒロイン』に俺が付きまとわれていても誰も彼もが変に思わん。それどころか応援される始末で困ってるんだ」
思わず嫌そうな顔になるウィリアム。
「あらら、ヒロインのオリヴィエは王太子ルートを選んじゃったんですか・・・というかホントに乙女ゲームの世界だったんですね。びっくりです!」
目を最大限に広げてパチパチと瞬きしながら若干興奮気味のエリーゼ嬢。
それを眺めながら、頭が異世界なのかも知れないとつい思う第1王子殿下・・・
「ウ~ン、でもソレが嫌なんですよね?」
ウィリアムが大事そうにシルフィーヌを自分から隠す様子を見ながら首を傾げるエリーゼ。
「当たり前だ。俺にはフィー以外の女は全部モブだからな」
「・・・////」
「ヒャア~、凄いですねぇ。全然ゲームとは違いますね。見たところシルフィーヌ様もゲームよりずっと麗しいですし! 眼福です~」
嬉しそうな顔を一瞬したが、
「でも、ヒロインの行動を周りが助長する様な状態ってこの世界の常識では異常行動ですから、ひょっとしたらゲーム強制力が働いてるっていう事でしょうかねぇ・・・」
ウ~ンと眉を寄せ腕を組考えるエリーゼ。
その仕草を見ていて、何だか違和感をウィリアムは感じた・・・
「なんか、お前女っぽくないよな?」
「そうでしょうか? 今思うと前世はジェンダーレスっぽかったんですけど、今生もそんな感じでしょうかね?」
フンフンと1人で納得するエリーゼ。
「そういうのがよく分からん俺に聞くなよ・・・」
脱力気味の殿下に代わって彼の後ろから声を掛けるシルフィーヌ嬢。
「エリーゼ様は、強制力を打破する方法とか思いつきませんか?」
その言葉にウ~ンと首を捻ると薄紫の巻き毛をフルフルと揺らして
「残念ながら思いつきませんね、でも」
顎に手をおいて考える仕草をするエリーゼ。
「御二人とも見たところ既にゲームの展開とは違う関係性のようですから、何とかなるんじゃないでしょうかね~・・・」
肩を竦めながら、
「ゲームの展開と真逆にしてみるのもありかも知れません」
そう言って、首を更に捻る。
「真逆?」
「そうです。ゲーム上での御二人は意思疎通が出来てなくて、他人行儀だったが故にヒロインに付け込まれた訳ですから」
「「付け込まれた・・・・」」
その表現は実に目から鱗。
「この際、溺愛ラブラブアピールを各方面に周知させるとかはいかがでしょう?」
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