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37.ラブラブ♡大作戦?
フンフンと自分の考えを自ら肯定するように、頷きながらズレた眼鏡のブリッジを指先で『クイッ』っと上げるエリーゼ嬢。
「溺愛・・・」
「ラブラブ・・・」
2人がポカ~ンとするのを見ながら、
「それこそゲームのストーリー上の御二人の関係性とは真反対でしょう?」
エリーゼ嬢だけが、いい笑顔でそう言った。
「まあ、確かに」
「言われて見れば・・・」
困惑気味の2人を置いてきぼりにしたまま、
「早速です! 我が領内のお忍び視察中から是非とも始めましょうッ!」
目をキラキラさせながら片手を振り上げガッツポーズをする彼女。
「お、おう・・・」
「あ、はい・・・」
若干引き気味な殿下と公爵令嬢である。
×××
その翌朝。
伯爵邸の別々の客間で目覚めたウィリアムとシルフィーヌ嬢。
朝食後の視察は伯爵夫妻の娘であるエリーゼが案内役だ。
「いいですか? 御二人は今日から相思相愛ラブラブ溺愛モードですよ!」
コリンズ領の視察という名目を熟すために領都に近い港へと向かう馬車の中で力説するエリーゼ嬢。
向かい側に座るのは当然シルフィーヌとウィリアムだ。
「ラブラブ溺愛・・・」
「・・・」
思わず口元に手を置いて頬を薄っすら染めるウィリアムと、これでもかという位に真っ赤になるシルフィーヌ。
「馬車の中に座る時は殿下のお膝抱っこで移動です!」
「「え」」
「ほらあ、早く膝抱っこして下さい殿下! シルフィーヌ様も諦めましょうよ。何なんですかそのお2人の間の隙間は?!」
「いや、婚約者との適切な距離がだな・・・」
言い訳をするウィリアムに向かい
「そんなシラケる距離、今後は一切必要なしです。溺愛モードの恋人達の適切な距離はゼロ距離ですから」
フフンと胸を張るエリーゼ嬢。
「ほらその隙間が邪魔なんです!」
シルフィーヌとウィリアムの間の30センチ程の空間をビシッと指差すと
「その空間がヒロインに付け込まれる隙です! そこに乙女ゲームの罠が仕込まれてしまうのですよッ!」
慌てて2人共がお互いに向かいズズっと座る場所を移動して肩と肩が触れ合った・・・
「良くできました」
満面の笑顔のエリーゼ嬢。
「殿下、もうひと声です、ほらあ~。腹括っていっちゃいましょうよ。ヒロイン撃退するんでしょう?」
「う・・・分かった。フィーいいか?」
「え、ええと、ハイ」
結局目的地である港に着くまでウィリアムの膝に載せられて沸騰しそうな顔色のままのシルフィーヌと、神妙な顔で膝の上の柔らかさを堪能するウィリアム。
「素晴らしいです~♡ ムフフ」
しかし一番愉しんでいたのはエリーゼ嬢だったようである・・・
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