43.1度読んでみて♡びっくりするから

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43.1度読んでみて♡びっくりするから

 コリンズ伯爵邸に帰ったウィリアムとシルフィーヌが客間でくつろいでいると、エリーゼ嬢が例の8冊あるという本を手に持って現れた。 「お話を聞く限り、乙女ゲームの流れはわかっているようですが、今ひとつ考察が足らないのでは? と思い此方をお読みいただければ良いかと思いましてお持ちしました」  エリーゼはその薄い本をソファーの前にあるティーテーブルに置いた。 「これ、エリーゼ嬢が書いた原稿か? えらく薄いな?」 「いえ、出版後に王都の書店で手に入れたものです。平民にも手に入れやすく、安い仕上がりですから前世の貧乏サークルの同人誌よりもペラッペラです」 「そ、そうか・・・」    シルフィーヌと一緒に作ってきたゲームシナリオを書き留めたノートは貴族の使う日記帳だ―― そりゃ見かけも紙質も違うよな、と納得するウィリアム。 「かなり詳しいですね。私が思い出したものより物語仕立てになっていて読み込みやすい気がします」 「背景の描写とかも事細かに文字に起こしてますからね」 「確かに俺達が作ったやつより詳しい気がする・・・」  間諜が入手したこれと同じ薄い本8冊は現在は王妃の手元にある筈のだが未だに現物は全く見ていないウィリアム。 「絶対に母上、読み込んでるから俺とアダムに渡さなかったんだな・・・」 「実際読み物としては前衛的だと思いますから夢中で読んでるかもしれませんね・・・」 「息子2人の濡場読む母親ってどういう気持ちなんでしょうねェ」  エリーゼの言葉でウィリアムとシルフィーヌはつい遠い目をした。  ××××  「あらあらあらあら、困ったわね。まさかこんな展開になるなんてねえ」  一方こちらは王都の王宮内にある王妃殿下の執務室。  美しい艶のあるワインレッドの革の表面に金属の鋲の装飾がされた豪華なウィングバックチェアに深く沈み込むような姿勢になってコメカミを押さえている最中だ。 「読んでるうちに頭が痛いな、とは思ってたんだけどなんだか私がもう1人いるみたいになってきたわ。何でこの先の展開が思いつくのかしら・・・?」 「母上もですか? 奇遇ですね私もです」  母である王妃のすぐ横のソファに座っていたアダムが困り顔でそう言うと、 「あのう、これって・・・『学園の華☆オリヴィエの胸キュンサクセス・ストーリー』っていう題名が自然と頭に浮かぶんですけど、どうなってるんでしょう・・・私が何処かおかしいのでしょうか」  自信なさげにアダムの婚約者である候爵令嬢が小さく挙手をした。 「「それだ!」」  彼女の言葉を聞いて、王妃とアダム王子の2人が同時に叫ぶ。 「「モバイル乙女ゲームッ!」」    全員が転生者だったようだ・・・・  びっくりである。
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