48.ギルドカウンター

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48.ギルドカウンター

 カートレット王国の冒険者ギルドの本部は王都ケインズにある。  ギルドに登録できる年齢は最低で8歳だが、人族でこの年齢で登録する者は少数派で、ほとんどが10歳以降で登録する。  この国では成人が15歳なので、その年齢で加入する者も多い。――成人なら身元保証人が必要無いからだ。  ×××  その日、1人の少女が冒険者ギルドのカウンターにやってきた。  フード付きのマントに質素なワンピース姿だが、フードから溢れた手入れの行き届いたハニーブロンドの髪色で貴族だろうという事が一目で分かる。 「冒険者登録をお願いします」  ガラス張りのカウンターの向こうに座る受付嬢が、無愛想な顔のまま登録用紙を黙ったまま差し出した。  その薄っぺらい緑色の紙には、名前、生年月日、出身国、そして希望する冒険者としての職業を記入するだけである。 「字、読めるならそれ書いて。読めないんなら読むけど」  フードを被った人物は 「読めます」  そう答えるとペンで空欄を埋め始めた。 「出来ました」  丁寧に書き終えた申込み用紙を受付嬢に渡す。 「はい、え~と名前、生まれた国、生年月日、職業は魔法使いっと。間違いなく記入してる?」  フードの少女はコクリと頷いて 「間違いないです」 「じゃあ、え~っと新人は最低ランクのFからね。素材収集とかを真面目に続けてくとEにすぐ上がるからぁ。後はパーティーメンバーをどうするかよね? 誰か知り合いは?」  彼女が首を傾げたので 「いないんなら当分はソロになるけど」  少女がコクリと頷いたので、受付嬢が薄っぺらい紙にソロである事を書き加えた。 「バディが出来たら改めてここに来て報告してね」  そう言いながら、銀色の金属でできたドッグタグを彼女の前に差し出した。 「高位ランクに上がる迄は大した仕事もないから、特に魔力登録もないからそのまま仕事を受注して熟してたらいいわ。Cランクまでギルドの受注達成ポイントが貯まると、改めて個人の魔力登録をするから。それから、このカードの再発行にはお金がかかるから気をつけて失くさないように。じゃあ登録料金が1,000メセタね」 「ハイ」  マントをすっぽり被ったままの少女はポシェットから銀色の硬貨を取り出した。    1,000メセタ硬貨である。 「毎度あり~。じゃあ頑張ってクラスアップしてちょうだいねー」  受付嬢が注意事項やギルドの決まりが書かれた紙をピラリと渡してきた。 「読めるんなら読んどいて。ま~その辺の奴らに聞いても分かるけどねー」  少女はそれを手にすると目を通してから丁寧に折りたたみ肩から斜めがけにしていたポシェットに入れると、ギルドカウンターから離れて建物から静かに出ていった。 「へー。シルフィーヌちゃんねえ」  受付嬢が書かれた名前を確認しながら肩を竦める。 「まあ、見たとこ貴族様の暇つぶしかしらねえ」  そう言って、『シルフィーヌ』と署名された紙を一瞥した後、『新人』と書かれたファイル帳に挟み込んで棚に戻した。
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