62.課金アイテム?

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62.課金アイテム?

 その後、辺境伯の私兵もウィリアム達王都からやってきた援軍もほぼ同じ事を何度も繰り返した。  もちろん初陣だったシルフィーヌも同行した2家の侯爵家子息達も、その間顔にこそ出さないが心中はゲンナリしながら頑張って戦い続けカマキリや毛虫や蛾や蟻などなど・・・に随分と耐性がついた頃になり魔獣の暴走はやっと収束を見せ始め作戦は無事終了した。  彼らがこの地に遠征してきてから、約1週間経った頃だった・・・  ×××  「やはりおかしいですな」  第1王子旗と王国軍旗の2つを掲げた天幕の内でミーティングテーブルを囲み、広げられた地図を睨みながら騎士団長がぼそりと呟く。 「これだけ多様な魔獣がスタンピードまがいの動きをしたというのに、上位種を全く見掛けませんでした」 「ああ。辺境伯軍からの報告にも魔力を持つAランク以上の魔獣の報告がなかったな。これだけの数だ。1体も見つからんのはおかしい」  東の辺境伯から送られてきた報告書と、こちらの軍務書記官の書いた調査報告書をペラペラと捲り渋顔になるウィリアム王子。  そして何故かミーティングチェアに座ったウィリアムの膝に乗せられ顔を赤くするシルフィーヌ嬢・・・  ――ちゃんと溺愛ラブラブ作戦は続行しているようで何よりである・・・―― 「通常ならガルムのような山犬系の魔物はリーダーだけがAランク個体になるんですが、それすら見つかりませんでした」  魔獣の死体を確認した武官も首を捻る。 「調査した方がいいだろうな」 「例の鉱山でしょうか」 「ああ。あそこで見つかった鉱石に何かあるのかも・・・」  そこまでバートン騎士団長と彼らが話すのを聞いていたシルフィーヌが首を傾げ小声でウィリアムに訪ねた。 「ねえウィル鉱石ってアボット領で見つかったっていう?  確かにアボット領は山脈の向こう側よね」 「ああ。例のあれだ。今の所、暫定的に山も鉱石も王家預かりになってるがな。魔力を注ぐとその魔力を温存できるっていうやつだよ。その山を起点にして今回の魔獣騒ぎが起こってるんだが鉱山近くの場所では被害が出ていないんだ」 「ひょっとしたらそれって『祝福の結晶』の事なのかしら・・・」  何かを思い出すように眉を寄せる彼女の顔を覗き込み 「なんだその『祝福の結晶』って・・・」  目をパチパチさせるウィリアムに向かい。 「う~ん?  確かゲームの中の課金アイテムだったと思う。エリーゼさんの書いた本には出てこなかったし、私も課金はしなかったから今の今まで忘れてたんだけど・・・攻略対象者の好感度を上げるための隠しアイテムにそんなものがあったような」  ムムムム、と眉根を寄せるシルフィーヌを見ながら王子はフム、と顎に手を置いた。 「どっちにしろ鉱石の採掘場を調べる必要があるんだが、フィーも一緒に行ってみるか?」  その言葉にコクコクと頷くシルフィーヌ。 「行くわ。実物を見たら思い出すかも」 「よし。じゃあ1度王都に戻ったら調べに行こう」 「ねえ、もうそろそろ膝から降ろしてくれる?」 「なんでだ? 溺愛ラブラブを周知させるんだろう? 皆んなに知ってもらう良い機会じゃないか」  ん? と。いい笑顔になるウィリアム。 「・・・え~と、もういいんじゃないかなぁ・・・」 「まだまだ足らんと思うぞ?」 「・・・そうかしら?」  思わず周りを見回すが、皆んな生暖かい目になってこちらを見ているような気が・・・勝手に顔が赤くなる。  膝に抱っこされた自分と小声で話し合うウィリアムは傍目から見ると十分イチャイチャしているようにしか見えないと思うのだが、そう言われるとそうかなあ、もっとやったほうが良いのだろうか? と首を傾げるシルフィーヌである・・・  多分、殿下の満足度の問題である。
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