6.二人の婚約の経緯

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6.二人の婚約の経緯

 第1王子ウィリアムと婚約者であるシルフィーヌ公爵令嬢は生まれる前から婚約者同士であった。 ×××  「お前のトコに娘が産まれたら俺の息子の嫁にどうだ?」  ――因みに当時ウィリアムは2歳だった。 「そりゃあ良いな、ウチの家内に似た娘なら将来は傾国の美女間違いなしだからなぁ~」  アーバスノット公爵の妻は当時右に出るものが居ないとまで云われた美貌の持ち主であった為、貴族間での軽い冗談(ジョーク)ではあったが傾国の美女と囁かれていた。 「「わはははは、じゃあいっちょ契約しとくかぁ~」」  親友同士である国王と公爵が、お互い酔った勢いで魔法誓約を交わすというトンデモナイ出来事があったのが今から16年程前の事だ。  この直後。  国王は王妃に。  アーバスノット公爵は妊娠中の公爵夫人に。  お互いぐぅの音も出ない位に責められたのは想像に容易い出来事である。  そんな訳で。  酔った勢いで結ばれてしまった婚約と言えども誓約魔法を使った正式な婚約者同士になってしまった二人―― しかも片方は生まれていないため性別すら未明である。  もし公爵家に産まれた子供が男児だった場合は魔法契約も無効となっただろうが、アーバスノット公爵夫人が産んだのは紛うことのない女児だった・・・(ある意味ギリギリセーフ!)  長女はシルフィーヌと名付けられ生まれながらにして第1王子ウィリアムの婚約者となり将来的には王子妃、ゆくゆくは王妃になるであろうという運命を背負うことになったのである。  ×××  この国の王族や数少ない高位貴族家に生まれた子息子女に与えられる教育は各家の中で幼少期から行われる。  その為、王城に招かれる高位貴族の子息子女に向けての7歳の茶会に出席する時点で、彼らは高い社交性と作法を備えているのが普通だ。  シルフィーヌ嬢は当然だが将来の王子妃としての教育が公爵家内で行われた。  王宮から派遣された家庭教師と公爵家で選定されたマナー教師達からの手厚い教育を施された彼女は上品な所作と、貴族子女としての社交力、そして磨かれた可愛らしさを備えた令嬢としてすくすくと育って行った。  但し、婚約者のウィリアム王子とシルフィーヌは7歳の茶会までは会わないことを婚約の条件とされていたため――主に夫人達二人分の厳しいお叱りにより――大勢の高位貴族の子息子女と共に初顔合わせとなった。 「ウィリアム様に初めてお会いできるのね」  小さな淑女は期待を胸にときめかせながら若葉のような緑の瞳をキラキラとさせ、両親と共に王城へと馬車で向かった。
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