73. 謁見の間

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73. 謁見の間

 王都ケインズの王城の中央付近、文官棟と軍事棟の丁度間の辺りにはそれなりの大きさの謁見室が幾つかある。  こじんまりした部屋から、パーティーが開催できる位に大きなホール迄、用途や相手によって使い分けるのだが、その中の一つ丁度少集団が入っても問題なく座れる程度の部屋に、国王陛下が渋顔で座っていた。 ×××  「で? どうしてお前達がこの場にいるんだ?」  苦々し()に口を開いたのは皆さんご存知、勿論この国のイケオジ国王陛下である。  彼が声を掛けたのは、自分の直ぐ横の王妃の玉座に座る妻アレクシアと、息子である第2王子アダムだ。  深い緑の瞳に銀髪の王妃と、同じ色合いをした息子がニコリと笑う。 「陛下が私共に招集をかけたのでしょう?」  そう言いながら、(くだん)の招集状を広げて見せるアダム――こっそり陛下が作ったであろうアレである。 「いや、ソレはお前達2人に向けてではないだろう?」  確かに呼び出しは明確にアボット家当主と、魔塔の一魔術師宛になっていた。  のだが・・・ 「魔塔の責任者であり魔術師長である私が出席して何か不都合がありますか?」  王妃によく似た麗しい顔にニッコリと満面の微笑みを添えた息子が此方を向いた。 「い、いや、まあ。その・・・」 「私の部下を呼び出すのなら、責任者である私が同席するのは必然でしょう?」  ――怖い。目が笑ってない・・・  思わず目を泳がす陛下。  但しその真正面には王妃の席が・・・  ニッコリ微笑む王妃の笑顔も、目が笑って無い気がするのは気のせいか・・・? 「あ、アレクシアも執務が有るだろうが?! こんな所に居なくとも・・・」 「お言葉ですが陛下?」  に〜っこりと弓形(ゆみなり)に目を細め、扇で優雅に口元を隠す王妃様。 「な、何だ?」 「(ワタクシ)は王妃としての執務は午前中に完璧に熟しておりましてよ?」  つまり、彼女の言いたいことは  ――午後の執務はお前の代わりにやってんだよ?! なんか文句ある? アアン?  である。  当然、弓形(ゆみなり)になった目は優しい微笑みと言える様なものでは無く、まるで魔獣が獲物を見つけて喜んでいる様に見えた・・・  ――怖っ!!  と思ったのは陛下だけ・・・でなく、その謁見室にいた侍従や文官、呼び出された魔術師やアボット家当主も同様だった。
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