84 オリヴィエ・アボット⑨〜迷惑な婚約者?

1/1
前へ
/96ページ
次へ

84 オリヴィエ・アボット⑨〜迷惑な婚約者?

 ルームメイトの忠告に従ってその日の授業はお休みした。 「でもこのままだと単位取得が出来なくなっちゃうな・・・」  休んだとはいえ、病気という訳でもないので机に向かい図書室で借りてきた本を開いて読む事にしたのだけれど、全然頭に入ってこない。 「今日は休んだけど明日からはどうしよう・・・」  辺境伯家の長男が寮に本を運んでくれたってだけで、何でこんな目に遭わないといけないのかしら。  第一王子殿下が婚約を解消しないからって他のフリーの王族に勝手に目を付けて、婚約者だって触れ回ってるのもどうかと思うのよね。ましてや本人に無断でって、ソレ不敬になるんじゃないのかなぁ。  随分前に会ったウィリアム殿下は、話こそしなかったけどかっこよかったし普通にしてるだけで素敵だったけど、カートレット先輩ってこっちの言い分なんか聞いてくれそうにないし偉そうな『俺様』だし。あんなのの何処がいいのかしら? あーだめだめ、こんな不毛なことばっか考えててもしょうがないじゃん。  そう思って椅子から立ち上がり、昼食を貰いに行くために椅子から立ち上がった。  寮生は寮母さんに朝のうちにお願いしておくと、お休みした日の昼食は作って貰えるけど病気の場合以外は寮の食堂まで取りに行かなければならないのだ。 「とにかく明日からの登校よね・・・」  ウンウンと悩みながら食事の載ったプレートを受取って部屋に戻ろうとした、のだが・・・ 食堂の出入り口を見慣れない令嬢たちに塞がれてしまったのだ。 ×××  「貴女がアインス様に言い寄ったっていう男爵令嬢なの?」  金髪で巻きの強いカールが両サイドに垂れ下がるツインテールの髪型をした上級生が私に指を差した。  その後ろにあと3人程お供を引き連れているのがチラリと見えた。 「え? そんな覚えないですけど」 「嘘おっしゃい!」 「図書室の本を重そうだからって運んでくれたことはありますけどぉ・・・」 「あの方がそんな親切な事をする筈がありませんわッ!」  ――微妙にこの人の言ってる事ってさらっと失礼な気がするけどあの俺様な態度から考えると、なんか納得しちゃうわ・・・ 「いや、親切って言うか、あれは余計なお世話だったし・・・」 「まぁあぁぁッ! アインス様にお世話になったくせに! 文句を言うとは、なんて厚かましいのかしらッ」 「・・・運んでくれなんて頼んでませんよ。あの人が無理矢理私から本を取り上げたんですよ?」 「んまぁあぁなんて失礼なっ!」 「・・・」  煩いなぁ。唾が飛んできそうな『んまぁあぁ』っての辞めてくれないかしら。 「とにかく、あの先輩とは何の関係もありませんから」 「嘘おっしゃいっ! 楽しそうに会話してたってお聞きしましてよ!」 「会話なんか殆どしてないですってば・・・」  聞く耳を持たないってこういうのを言うんだろうな・・・
/96ページ

最初のコメントを投稿しよう!

116人が本棚に入れています
本棚に追加