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「ジューノ、どうしたんだ?」
「おっと。私はもう失礼しますね。結果はミナーヴァ様にお伝えするようにとのことです。では」
逃げ足はや……!脱兎のごとく去っていったルキを目で見送りつつ、おれはマウォルス様に旧知の仲であることを説明した。
「そうか」
「え!ちょっ……マウォルス様?」
マウォルス様は納得したように頷きながらも、突然おれを両腕でぎゅうぎゅうと抱きしめた。待って、ここ玄関ホールなんだけど!
使用人たちの視線が一気に生暖かくなるのがいたたまれない。おれはマウォルス様から久しぶりのスキンシップに喜びたい気持ちと、こんな場所で恥ずかしいという気持ちが混ざりあって、背中に手を回すこともできなかった。
まさか、ルキに嫉妬したとか?なんであってもやっぱり嬉しい。このまま今日はいい雰囲気になったりして……?と期待したのもつかの間、俺は弾力のある胸板から離されてしまった。
おれが見上げると、マウォルス様は眉間にしわを寄せた怖い顔をして目を閉じてしまった。
「……すまない。仕事に戻る」
あーあ。おれは不貞腐れて、ルキが持ってきたものを開封しに自室へと向かった。
――手紙を読み、小包の中身を確認したおれはぷるぷると震えていた。これは武者震いだ。おれは闘志を燃やし、ひとり部屋で拳を突き上げた。
「今夜こそ……旦那さまを誘ってやる!」
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