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しばらくして、ミナーヴァ姉上が娘のリベルを連れて遊びにやってきた。
「じゅーの!」
「こらー!走らないの」
リベルはおれの顔を見たとたん走って飛びついてきた。その勢いに思わず後ろへ倒れそうになったけど、当然のように頑丈な身体によって支えられた。
「……頼むから気をつけてくれ」
「ふふ、すみません。リベル、せっかくだから庭で遊ぼうか!」
「ご本がいい!読んで!」
姉上は苦笑いしてマウォルス様に向かって頷いた。きっと移動で疲れているんだろう。
お姫様の要望に応え、おれはリベルを連れて書斎へと向かった。
夜の食事が終わりリベルが眠ったあと、おれは姉上と晩酌していた。
手元にはお気に入りになった果実酒がある。姉上はおれのを一口飲んで「甘っ」と呟いたあと、別の酒を所望した。
姉上は僕ほど酒に弱くない。姉弟なのに全然違うんだから不思議だよなぁ。
「前は悩んでたみたいだけど、最近はどうなの?ちょっと痩せたんじゃない?」
「あの下着と香油にはびっくりしたけど……ごほん。おかげさまで、仲良しだよ」
実際あれ以来、おれはマウォルス様を誘う自信がついた。
マウォルス様も発情期以外はおれの身体に負担が大きいと思って遠慮していたらしい。確かに準備とか、受け入れるところの柔らかさが違うから、そこを気にしてくれるのは嬉しかった。
おれが誘えば、マウォルス様は壊れ物に触れるみたいに優しく抱いてくれる。この前みたいに激しいのも良かったけど……どっちもいいと思う自分はやっぱり淫乱なのかもしれない。
さいきんはおれもやっと落ち着いて、抱きしめあって眠るだけでも満足できるようになった。
「ねぇ姉上、性欲ってこんなにムラがあるもの?さいきんおれ、マウォルス様にくっついてても安心して眠くなるばっかりで……、あんなにかっこいい旦那様なのに。もう枯れてきちゃったのかも……」
「あんたまさか、それで酔ってんの?……はぁ。やっと十八になったんだから、枯れるって歳じゃないでしょう。別に性欲なんてあってもなくても、幸せなら良し!肉体的な繋がりより、精神的な繋がりの方が重要だと思わない?」
「確かに……。そうだよね!ありがとう姉上!」
「チョロ……」
「ん?なにか言った?じゃ、もう眠いから部屋に戻るね」
この屋敷に来た頃は不安で眠れない日々を過ごしていたのに、近ごろは寝付きが良すぎて困るくらいだ。
おれは姉上に就寝の挨拶をし、寝室へと向かった。
もちろんその晩もぐっすりだ。
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