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翌日、おれは姉上とリベルを伴って庭に出た。マウォルス様は騎士団の仕事でいない。
リベルが鬼ごっこをしたいというから付き合おうと思ったんだけど、姉上がおれとお茶をすると言って聞かなかった。どっちが子どもなんだか……。
結局庭にテーブルが運ばれ、使用人に相手をしてもらって楽しそうなリベルを眺めながら優雅にティータイム中だ。
「ジューノ、このお菓子が美味しくて好きだからって前に送ってきてくれたでしょ?全然手を付けてないじゃない」
「うーん……なんか食欲がわかないっていうか。さいきん食べたいと思わないんだよね。あ、でもこっちは最近好き」
口直し的に用意された塩味のスコーンに手を伸ばす。姉上は呆れた顔でおれに告げた。
「ジューノあなた……ほんとうに気付いてないのね」
「え、なにが?」
「じゅーの!こっち来て!」
姉上の言葉の意味は気になったものの、リベルが僕を呼びにきた。
しかしおれは腕を引かれるまま立ち上がった瞬間、急激なめまいに襲われ……その場で倒れてしまった。
「ジューノ!」「じゅーの?」「ジューノ様!」
姉上やリベル、家令の焦った声が聞こえたけどあまりにも気分が悪くて、おれはそのまま意識を手放した。
深い海の中から空に向かって泳ぐみたいに意識が浮上する。パチリと目を開けば、碧い瞳と目が合った。おれが愛してやまない色だ。
「……マウォルスさま」
「ジューノ!大丈夫か?気分は?……心配したよ。知らせを受けたときは生きた心地がしなかった」
「ごめんなさい。でもただの眩暈だし、最近たまにあることなので」
「――はぁ。本当は自分で気付くまでは、と思っていたんだが……」
「?」
おれの発言に心配から呆れ顔へと表情を変えたマウォルス様が、別室で待たせていたらしき医者を呼んできた。ここで住みだした頃にもお世話になった壮年の女性だ。
え、まさかおれ病気なの?血の気が引きかけたのもつかの間、彼女は驚くべき事実を告げた。
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