貧乏貴族は婿入りしたい!

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どうしよう。おれは潤んできた葡萄色の目で正面を見上げた。 「マウォルス様……おれ、発情期が来てしまったみたいで……ど、どうしたらいいんでしょう」 「……」 ――正面に姿勢よく座っているはずの男は、前屈みになって目を血走らせ、眉間に深い皺を刻んでいた。 うぇ!?怒らせちゃった?すっごい怖い顔してるんだけど!! おれが思わず慄いて「ひぇっ」と声を上げると、マウォルス様はぎゅっとその碧い目を閉じ絞り出すような声で告げた。 「……私が世話しよう」 「わ、ありがとうございます!じゃ、あの、宿の部屋まで運んでもらってもいいですか?もう歩けそうになくて」 「…………わかった」 なんだ、見た目は怖いけど良い人でよかった~! おれは発情期が始まったばかりのころ急に動けなくなったりすると、生前の父に部屋まで運んでもらったことを思い出していた。父上より何倍も体格のいいマウォルス様なら、それくらい朝飯前だろう。 マウォルス様は相変わらず険しい顔をしながら、俺を大事そうに横抱きに抱え上げ馬車を降りた。 (ふわぁ、おれも成人男子なのにさすが騎士様。安定感がすごいや……) ――思考力の弱ってきた頭でのんきに感心していたおれは、彼の言う『世話』が自分の思っている世話と全く違うなんて気づきもしなかった。 さらには馬車の中はオメガであるおれのフェロモンで満たされていたことにも…… ドサッ、と大きな寝台の真ん中に下ろされたときも、まだおれは事態の深刻さに気付いていなかった。 「わ、ありがとうございます……その、飲み物だけでも用意してもらえると、嬉し……え?服は自分で……わ。ぁん!」 マウォルス様はおれの着ていた服をあっという間に全て取り払ったかと思いきや、緩く立ち上がりかけていたペニスをいきなり掴んだ。 そのまま手を添えて上下に擦られると、状況の理解も追いつかないまま身体が高められる。 「あっ、まって。んん!……そんな、あ、あぁっ。……イッちゃう、だめ!ひゃああ……」  他人に性器を触られたことなんてない。おれは身構える暇もなく、瞬く間にのぼりつめてしまった。 ――そこからの記憶はところどころ飛んでいる……達したことがきっかけで、本格的な発情期に入ってしまったからだ。
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