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笑われるならいい──。
ファンが応援してくれたのに、その応援と期待を裏切ってみんなを悲しませるくらいなら笑われた方がマシだ。
底しれない恐怖に反して歌はもうすぐ終わり、底が見えてくる。
もうすぐ曲が終わる。終わってしまう。
曲が終わればコメントを読まなくてはいけない。
なんて書かれているか想像したくなかったが、曲が終わり無音に包まれながら私はコメント欄に目を移す。
──するとそこには見たことのない景色が洪水のように流れていた。
無数の拍手の絵文字が送られ、信じられないスピードでコメントが流れていた。
時折流れるコメントも拍手の絵文字の波にすごい勢いで流され読めない。勢いに怯えて何も声を出せないでいても拍手の絵文字は止まらない。
「......あははっ! みんなありがとー!」
私は笑い声を無意識に出してしまう。
やっと理解できた......。
なにも不安を感じる必要などなかったのだ。失敗の恐怖で逃げ出そうとすることも、パニックになることだって私には必要なかった。
頭の中で必死に逃げようと訴えるもう1人の私。でもそんなのはただの妄想だった。
私がするべきだったのは、私に応援の声を届けようとしているファンの声を聞くことだ──。
ただ私の勝手な妄想を本気で怖がっていた自分が本当にバカみたいだ。
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