好みの味

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私は目を疑う。 850円の料理の食料なんてしれている。味なんて二の次の安い食材だ。 それでなんでこの味になるのか。 私が作ってもこうはならないだろう。その後に原価計算をして大体の原価が分かり私はダメ元で作ってみたがやはりあの味にはならなかった。 疑問に思った私は、専門学校の講師に同じ材料でペペロンチーノを作ってほしいとお願いしたくらいだったが、結局講師が作ったパスタでもあの店には敵わなかった。 講師でも敵わなかったと分かったその瞬間。私の尖った考えはまるで海のいたずらな波で崩れた砂の城のように簡単に崩壊したのだった。 それからこの店に就職してこの味の秘密を盗もうと狙っている。 さらにこの店は本店で、他に4店舗ある。 20代後半と若い店長は経営者としても成功していて、この店長からは盗めるものは多い。 店長は性格もよくて優しく面倒見がいい。私は店長から色んなことを教えてもらって本当に感謝している。 これからも感謝を忘れずに、ありがたく盗まさせていただく。 「──できました美香さん。どうぞ」 あの時のペペロンチーノだ。 横目で作り方を見ていたが至って普通の作り方だ。 最初こそ違法な薬物を入れているのかと本気で疑って見てきたが、そんなことはなく驚くほど普通の作り方にいつも驚いていた。
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