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第1話 俺が恋に落ちた!?
俺は今本隆年齢不問。IT会社に勤めている。勤続27年、中堅を通り越して年長者組だ。
定年を迎え雇用延長をしている年長者もいて、その人達を横目で見ている。
『俺は雇用延長などせずゆっくり余生を楽しみたい』
これは今までの俺の思想だった。
入社時は、コンピュータの保守業務を担当し、修理した後のお客様からの感謝の言葉を頂くのが好きだった。時にはお客様と一緒に考え提案(プレゼン)をしてきた時期もあり、中堅までは仕事は楽しいと感じていた。
最近の俺はと言うと出社するのも億劫になってきていた。
『機会さえあれば転職したい』
これが今の俺の思想だ。
ある時、保守作業中に失敗をしてしまって保守業務を外され事務員に職種転換を余儀無くされた。それでも初めは良かった。
保守業務は、あらゆるスキルの高さやリスク回避するための気づきは必要で、少しでも欠けると大惨事を引き起こしかねない。そう言った業務に疲れていたこともあって、事務業務に興味がなかったわけではない。
事務業務はチームプレイが必須条件だった。
保守業務を担当していた時は、一人でお客様先へ行くことがほとんどで、定期点検や機器の導入の際には大人数で作業に当たることもある。しかし、気の合う先輩や同僚もいて大変な作業でも楽しかったし、作業完了の達成感もあった。
職種転換は四度目だが、現職は最悪の職場だった。
チームプレイに合わない俺、小ルールが多すぎて覚えきれない。
そんな中、年末から体調を崩していて休みがちになっていた。決して仕事ができないわけではない。仕事量が多いけれどもこなしてきたし、人一倍努力している。上司も同僚も俺の力量を認めてくれてはいるが、いかんせんチームプレイができない。なんとかついていってはいるが毎日気が重い。
そんな毎日を過ごしていた。
数か月前、同じフロアーに新たな職種のチームが発足された。
受注センターだ。
お客様からの注文内容の確認、発送手配が主な業務でお客様へ確認の電話をしたり、お客様からの問い合わせも受けている。時にはクレームを受ける事も有る。
俺は間近で彼らのやり取りを聞いていて「大変な業務だ」と思っている。また、そのチームの上司が厳しくいつもメンバーが怒鳴られていた。とてもじゃないが俺には耐えられない。
軽い聴覚障害のある俺にはできる仕事ではないし、俺が携わっている業務とスキルが異なり、変ってあげることも難しいだろう。そう感じていた。
1か月前、受注センターのメンバーの一人が退職することになった。
退職するメンバーが居てもおかしくない。俺だったら速攻やめている。ここまでなら気を留めず今も自分の業務に励んでいるだろう。
ところが、後任が可愛らしい若い女性だった。
彼女は受注センターの経験は浅く一から覚えて行く様子が目にとれていた。周りの職員が気にはかけているが、いつ上司から怒鳴られるか俺は気が気でなかった。いや気にかけすぎていた。
その子とはすれ違えば挨拶をし、朝や退社時には挨拶をするようにしている。俺は励ますきっかけが欲しかった。
俺の趣味は多彩で学生時代はできることはやってきた。今は落ち着き友人と趣味をしに出掛けることは無くなったが、神社に行くことが好きで良く行っている。今ではそれが日課になっていて、早朝か会社帰りに参拝に行くことにしている。
神社に参拝しに行く度にその子の事を祈っていて、自分でもやりすぎとは思っているが、業務上縁がないため、直接励ますこともできず、神社で参拝する事しかできなかった。
いつしかふと気が付くとその子の事ばかり考えていた。
『恋に落ちてしまった』
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